濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
里帰りしたWWEのスーパースター!
元新日のベイラーが日本公演で戴冠。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byEssei Hara
posted2015/07/10 10:40
元WWWFジュニアヘビー級王者にしてWWEの殿堂入りも果たしている“ドラゴン”藤波辰爾が、同じ新日本プロレス出身のベイラーの戴冠を祝福した。
日本での大会が急遽格上げされた経緯とは?
実はWWEは、日本公演の前日にシンガポール公演を行なっている。
多くの選手たちは試合直後に深夜便に乗り込み、東京に到着するとわずかな休息だけでリングに上がったのだ。
それでも、ジョン・シナvs.ケビン・オーエンズなどのシングルマッチでは20分近い熱戦が繰り広げられている。ハウスショーではストーリーは動かないものの、試合そのものをじっくりと味わうことができることもあるのだ。
また、二日目の公演はいつものハウスショーとは趣を変えたものになった。
トップ中のトップであるブロック・レスナーの参戦が決まったことで、有料動画サービス『WWE NETWORK』での配信が行なわれたのだ。
大会そのものが“格上げ”されたことになる。
日本に“里帰り”した元新日プロレスの戦士。
この日、レスナーと並ぶ“主役”になったのはフィン・ベイラーだった。WWEの系列団体NXTに所属する彼の、前のリングネームはプリンス・デヴィット。新日本プロレスのトップ外国人だった選手である。
初来日から数年間は新日本の“所属選手”であり、合宿所で生活していた男が、アメリカで名前を変え、キャラクターを変えて日本に“里帰り”してきたのだ。
公演初日は、ベテランのクリス・ジェリコに勝利したベイラー。ジェリコもライオンハート、ライオン道のリングネームで日本マットに上がっていた時代に実力を蓄えた“日本育ち”だ。これは、世界中のユニバースがうらやむ“日本仕様”のマッチメイクだった。
ジェリコに勝って“お墨付き”を得たベイラーは、中継イベントになった二日目の公演でオーエンズの持つNXT王座に挑戦し、必殺のクー・デ・グラ(ダイビング・フットスタンプ)を決めてタイトル奪取に成功した。
“巡業”ではタイトル移動はないというのがこれまでの常識だったから、驚愕の結果だった。
それだけベイラーの実力が高く評価されているということだろう。そして、彼がレスラーとして成長した日本でベルトを巻くことは、WWEとしても最高のストーリーだったのかもしれない。