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2015年型の和田毅、故障を越えて。
進化した2つの球種と“完成形”。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2015/06/29 16:15
コーチと相談し、マウンドを降りた和田毅。2012年に受けたトミー・ジョン手術からの完全復活を目指し、背番号を18に変更した今季は正念場のシーズンとなる。
向上した2シームと、対になるカットボール。
7回4安打無失点と好投した6月17日のインディアンス戦。今季6戦目にしてようやく掴んだ初勝利の試合後、和田はこう言っている。
「初球に結構、2シームがボールになることが多くて、もったいないことをした」
2シームをコントロールし切れなかった理由は、皮肉にも「去年より変化が大きくなった」からだった。だからインディアンス戦で降板直後、和田は相棒のデイビッド・ロス捕手から「初球に2シームを投げてボールが先行するぐらいなら、4シームを投げたほうがいい」とアドバイスされているのだが、初球の2シームがもっと簡単にストライクになるのなら、そういうことを言われることも無かったはずだ。
しかし、ドジャース戦ではそこがすっかり改善されていた。3回、3番ターナーを遊ゴロに打ち取っているが、これは初球に2シームを投げた結果である。
去年より変化するようになった2シーム。それに加えて今季の和田にはもう一つ、新しい武器が増えた。2シームと対(つい)になる動く速球。カット・ファストボール(通称カッター。小さなスライダー。速いスライダー)である。
和田はインディアンス戦の翌日、「昨夜はストライクゾーンを広く使えた」と言った。右打者にとっては自分に向かって変化してくる動く速球だ。踏み込むことに躊躇が生まれただけで、外へ逃げていく2シームの効果は自ずと上がる。ドジャース戦での和田は、もう少しで“2015年型ツヨシ・ワダ”の完成形を披露できるところだったのかも知れない。
「僕の代わりなんて、幾らでもいますから」
今まで以上に、これからが大事だ。和田は今季、キャンプ中に傷めた左脚の怪我からなかなか復帰できず、マイナーでは調子を崩すこともあった。そして、ようやく復帰したと思ったら今度は左肩の異常だ。「故障さえなければ――」という思いは、かなり強いだろう。
「僕の代わりなんて、幾らでもいますから」
と彼は言う。オプション(他球団に獲得される可能性のあるウェーバーにかけることなく、マイナーに降格させることができる球団の権利)のある身だ。「メジャーでは使えない」と判断されたら真っ先にマイナー降格候補になるし、噂されるようにもしもカブスが先発投手を補強しても、同様のことが起こり得る。
「とにかく少しでも長いイニングを投げること。そうすれば数字は付いてくる」
今季最高の登板となったインディアンス戦と、故障降板したドジャース戦で2イニングだけ披露した“2015年型のツヨシ・ワダ”の完成形。
進化する左腕の一刻も早い戦線復帰に、期待する――。