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武藤嘉紀の移籍金4億円から考える。
「売れる」ようになった日本、次は?
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/06/10 11:00
今年の3月に慶應義塾大学を卒業したばかりの武藤嘉紀。卒業から4カ月でブンデスリーガへ移籍するというスピード出世は、長友佑都を彷彿とさせる。
武藤クラスの移籍を年に4~6人起こすために。
そうして成長した若い日本人選手や、将来化けるかもしれない外国人選手がコンスタントにJリーグからの海外移籍を実現するようになると、武藤選手クラスの日本人と、億の値がつく外国人選手の移籍がそれぞれ年に2~3人起こることで、リーグ全体で現状にプラス年間10~15億円の外貨獲得は決して難しくありません。2ステージ制の導入で期待される増収が約10億円ですから、移籍ビジネスの秘める可能性はJリーグにとって極めて意義のあるものだと言えます。
移籍をめぐる根本的な問題は、選手たちにとってのJリーグの魅力が欧州に負けていることにあります。Jリーグでプレーすることと欧州でプレーすることのステータスを限りなく対等に近づけることを目標として、日本サッカーは歩まなくてはなりません。
クラブ(FC東京)にとっても、武藤選手自身にとっても賢明な判断である、移籍金4億円でのマインツ移籍――。これを、Jリーグの未来にとっても有益なものとするため、リーグと各クラブはこれまでの枠にとらわれない、新たなビジョンを今こそ描くべきだと思います。
(構成:日比野恭三)