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夢はブンデスリーガ初の日本人監督。
“新たなモウリーニョ”河岸貴とは?
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph byKosuke Endo
posted2015/06/05 16:40
写真左から、ギュンター・シェーファー、河岸、イェンス・アンドライ。河岸の日本人らしいともいえる真摯な働きぶりは、欧州サッカー界でも高く評価される。
通訳出身の名将に自身の将来を重ね合わせる。
とはいえサッカースクールの臨時コーチを務めることはあっても、指導の現場に常駐できていない現在の状況はもどかしいはず。しかし、かつて恩師のラバディアから「新しいモウリーニョ」とまで喩えられた河岸は下を向かずに、前だけを見据えている。夢見るのは、日本人として前例のないブンデスリーガのクラブ監督になる日だ。
「今の仕事をずっと続ける気はありませんが、置かれている環境は決してマイナスではありません。ドイツではピッチを離れて、育成コーディネーターなど別の仕事をしていた指導者が突然、監督として復帰するケースは多いですからね。トップクラブでサッカーに携わっているのは事実ですし、視野は広くなっています。いまの経験は指導する際の糧になると思いますよ」
しかし、モウリーニョのように通訳から一流監督まで上り詰める道は険しい。その厳しさを重々承知する河岸はこう続ける。
「それでも、私には大きな強みがあります。単なる通訳としてではなく、練習を補佐する指導者的な役割をこなしながら、ブンデスリーガとヨーロッパリーグの舞台を踏んだことです。選手はともかく、同じ経験を持つ日本人指導者はいないでしょう」
「新たなモウリーニョ」が抱く大志と可能性。
決して示し合わせたわけではなく、河岸と同じ見解を口にした人物が存在する。メキシコ人やフランス人の通訳として河岸と同時期にトップチームに所属し、スポーツ学にも精通するイェンス・アンドライだ。
「監督にとって大事なのは、豊富なサッカーの知識とそれを伝えるコミュニケーション能力。タカはその両方を高いレベルで持ち合わせています。それにブンデスリーガのトップチームで指導経験を積んだ日本人は、おそらく彼だけでしょう。運を引き寄せる必要はありますが、(夢を叶える)ポテンシャルは絶対にあると思います」
ブルーノ・ラバディアの愛弟子から新たなモウリーニョへ――。大きな野心を秘めた河岸の挑戦はこれからも続く。