フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
パトリック・チャンが正式復帰発表!
元世界王者が競技に戻った理由とは。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2015/05/08 10:45
ソチ五輪、エキシビジョン直後のパトリック・チャン。屈託の無いこの笑顔が、この秋から再び見られる!
高橋大輔とランピエルが持っていた類まれな能力。
技術においてギリギリの限界まで挑戦していくトップ選手にとって、毎シーズンはっとするほど違うスタイルのプログラムを完成させるというのは、至難の業である。
過去を見渡しても、そこまでの表現力の幅があったのはステファン・ランビエルや高橋大輔などごく少数の選手だけだった。
だがチャンが目指していくのは、技術的なチャレンジよりはそちらの方向なのだと言い切る。
「これぞフィギュアだ!」というプログラムを目指して。
ソチ五輪でたとえ金メダルだったとしても、競技に戻ろうという気になっていただろうかと記者の一人が質問し、チャンはこう答えた。
「そう思います。五輪で金メダルを取っていたら、自分は別人になっていたとは考えたくない。ぼくはあくまで、ぼくですから」
そして、こう説明した。
「復帰と聞いたら、ぼくが平昌五輪で金メダルを取るために戻ってきたのだと思う人は大勢いるでしょうね。もちろん頭のどこかにそれが全くない、とは言い切れません。でもそれが最終目的とは考えていない。今考えているのは、この先何年も『これぞフィギュアスケートだ』と人々の心に残るようなプログラムを残したい、という思いです。だからメダルの色は、重要ではないんです」
自分はまだ若くて体も動く。40歳になってから、もう少し続けておけばよかったと後悔はしたくないのだと、チャンは言葉を続けた。