ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
10度の防衛全てが日本開催の憂鬱。
内山高志に世界のスターとの戦いを。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2015/05/07 11:35
まさかの2RKOでV10を達成した内山高志。具志堅用高の記録が見えてくると同時に、すでに内山も35歳。トップフォームを維持できる時間がそれほど残されているわけではない。
「自分としては海外で名前を売りたい気持ちがある」
35歳にして圧倒的な強さを見せつけた内山。そのボクシングに驚嘆し、そして少し憂鬱な気持ちにもなった。この試合がどれだけ海外で関心を示されたというのだろうか、と。
注目度は、率直に言ってかなり低かったのではないか。実際にいまのところ、この試合が海外で大きく報道された形跡はない。内山は今回の試合が決まったとき、次のように発言していた。
「意外とやりにくい相手なのに、海外ではまったくの無名の選手。自分としては海外で名前を売りたい気持ちがあるので、微妙な部分はある」
内山は日本ボクシング界の至宝だ。世界のボクシング関係者は内山の実力を高く評価してるという。一方で、内山の試合を目にすることのない海外のファンで「UCHIYAMA」の名前を知るものは多くないだろう。あるいは名前を知っていても「ああ、日本からは決して出ていかないチャンピオンだろ」という認識にとどまっている。正直なところ寂しい。これだけの逸材なのだ。世界中のファンに見てほしいと思う。
謙虚な人柄で知られる内山はこれまで「ビッグマッチをやらせろ」とか「ラスベガスで試合をしたい」とか、マッチメークに関して強く自己主張することは少なかった。それでも最近は「4団体統一」や「海外で試合がしたい」と以前に比べて口にするようになっている。本人にも思うところはあるのだ。
不滅のV13への挑戦は悪くないが……。
内山の次なる目標は何か。不滅のV13に挑戦するのは悪くない。記録にも残る。ただし、今までのようなスタイルで防衛を重ねて記録を更新するのでは、本人も面白くはないだろう。統一戦や海外進出に踏み出しても、記録を塗り替えることは可能である。
内山にビッグマッチを─―。
真っ先に考えられるのは三浦との統一戦だが、実現の可能性を探ると、あまり芳しくはない。ネックとなるのは両者のファイトマネーだ。