サッカーの尻尾BACK NUMBER
88分間走り続けたチチャリートの涙。
レアルのCL4強進出を決めた“代役”。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byAFLO
posted2015/04/23 11:35
現在はマンチェスター・ユナイテッドから期限付き移籍中のチチャリート。今季終了後に買取のオプションが行使される可能性は、今回の活躍で高まったといえるだろう。
走り続けたチチャリートが報われたのは、試合終了間際。
何としてもこの機会を活かさなければならなかったチチャリートは、開始から相手を追いかけ、攻撃時にはスペースへ抜ける動きを繰り返してボールを呼び込んでいく。
彼のエリア内の嗅覚や裏へ抜ける動きは、ベンゼマにはない持ち味でもある。この試合でも巧みに体を入れて抜け、GKオブラクと1対1になったシーンもあった。
しかしシュートは止められ、ネットを揺らすことはなかった。
「やはり試合勘がないから……」
オブラクにセーブされる度に、スタンドの多くのファンがそんな思いを抱いた。それでも彼は今季のうっぷんを晴らすかのように走り続け、終了間際にようやく報われる。ロナウドとハメスの連係で右サイドを崩し、横パスに中央で合わせた、実に“9番”らしいゴールだった。
1試合で序列がひっくり返るわけではないが……。
負傷が癒えれば、今後も先発はベンゼマになるだろう。1試合で序列がひっくり返るほど物事は単純ではない。
しかし自信をつけた上り調子のチチャリートを抱えているというのは、アンチェロッティにとっても大きなプラスだ。
計算できるフォワードをベンチに抱えるレアル。準決勝でも、チチャリート投入のタイミングがひとつのポイントになるだろう。
ちなみにアンチェロッティはチチャリートの起用と同時に、もうひとつ賭けを打っている。それがセルヒオ・ラモスの中盤での起用だ。
以前のクラシコではアンカーを務めたが、今回は4-3-3の右インテリオールである。
「戦術面もうまくいった。モドリッチの負傷後にラモスの中盤起用を決めたんだ。空中戦で高さをもたらしてくれるし、彼は中盤でプレーするクオリティも持っている」とアンチェロッティ。
イジャラメンディやルーカス・シルバら、ベンチにミッドフィルダーを抱えながらも指揮官がペペ、バラン、セルヒオ・ラモスのセンターバック3人の同時起用にこだわったのは、アトレティコの脅威であるセットプレー対策でもあった。
この試合、アトレティコは得意の空中戦からチャンスを生むことはなかった。