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ハリルホジッチ哲学の原点を探る。
1982年、スペインW杯での屈辱。
posted2015/03/30 16:35
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Takuya Sugiyama
「新しい選手をプレーさせる」
戦前の予告通り、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は初采配でいきなり独自色を出した。
A代表初招集の藤春廣輝、川又堅碁をいきなり先発メンバーでデビューさせたかと思えば、本田圭佑、香川真司の2大エースを後半途中から投入し、ゲームの流れを引き寄せる。前半は連係不足で苦しんだものの、終わってみればFIFAランキング25位のチュニジア相手に2-0の快勝。
選手間の競争を促しつつ、きっちりと結果求めるという2つのミッションをクリアして、初陣を白星で飾った。
就任からわずか2週間ながら、選手選考のプロセスや初戦での選手起用を見ると、ハリルホジッチの意図がわずかながら浮かび上がる。彼は今後、日本代表をどのように導いていくのだろうか。
Number創刊35周年記念号に掲載されたハリルホジッチのインタビューには、そのヒントとなるような発言やエピソードが記されている。
遠藤を招集せず、本田と香川をスタメンから外し……。
「決断を下す際には、誰も傷つけることのないように極力注意を払っている。誰かを選べば、誰かが居場所を失う。あらかじめそれに対処する準備がなければ監督は務まらない。私は自分を情緒的だと思っているが、常にチームの利益を第一に考えて、合理的に選手を選んでいるつもりだ。チームが他のすべてに優先する」
これは、ハリルホジッチがアルジェリア代表監督としてブラジルW杯に臨む直前の言葉だが、指揮官としての信念を象徴としているといえるだろう。
事実、今回の日本代表の選手選考においても、遠藤保仁を招集しなかった理由にあえて言及し、歴代最多152試合の代表キャップを持つ功労者に対して敬意を示した。さらにチュニジア戦でスタメンから外れた本田と香川についても、試合後の会見でフォローしている。
実績のあるベテランやチームの大黒柱も、新戦力の若手も、「チーム」という絶対基準のもとに平等に扱い、機会を与える。一方でメンバーから外れた選手へのケアも忘れない。
こうしたハリルホジッチの哲学には、現役時代のある出来事が大きな影響を与えているという。