野球クロスロードBACK NUMBER
ホタテ漁からSB「勝利の方程式」へ。
今季ブレーク必至の若手・飯田優也。
posted2015/03/26 11:40
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
昨年オフ。ソフトバンクの松田宣浩に取材した時のことだ。インタビューが終わり雑談に入ると、自然と入団が決まったばかりの松坂大輔の話題になった。
松坂の話が一段落し、「これでソフトバンクの投手陣は、かなり磐石になりそうですね」と戦力の充実度を示すと、松田は「そうですね」と首肯し、こう続けた。
「若手もね、すごくいいのがたくさんいるんでね。飯田なんか本当にいいボール投げますから、来年はやってくれると思います」
飯田優也。今年3年目を迎えた24歳の左腕は、選手会長の期待通りのパフォーマンスをオープン戦で披露した。
中継ぎとして7試合に登板し、8回1失点、12奪三振をマーク。奪三振率13.5という数字からも理解できるように、飯田は三振が取れる投手である。かつてチームのエースだった和田毅を彷彿とさせる、テイクバックが小さく腕の出どころが見えづらい独特の投球フォーム。140キロ台のストレートは、球速以上に速く感じる。右打者の膝下に鋭くくい込むスライダーも強力な武器だ。
野球を続けるためにホタテ漁、パン工場で働く……。
「彼のボールは、バッターからすればすごく怖いと思います。三振が取れますし、こちらとしては安心して見ていられますよね」
工藤公康監督が満足気な表情でそう語る。オープン戦を通じて指揮官の信頼を得た飯田が、開幕一軍入りを果たしたのは当然だった。それどころか、野球関係者やメディアも「ブレーク必至の若手」と謳うほど、飯田の株は日を追うごとに上がっているのだ。
今でこそ将来を嘱望される飯田ではあるが、彼の野球人生を辿ると、エリート街道とはかけ離れた道を歩んできたことが分かる。
神戸弘陵高時代は控え投手。東農大北海道オホーツクでは2年に明治神宮大会、3年には全日本大学選手権と全国の舞台を経験はした。その一方で、遠征費を賄うために夜通しでホタテ漁をこなし、パン工場でもアルバイトするなど、東京六大学や東都大学といった有名リーグでプレーする選手たちからすれば想像もつかない苦労の日々を送っていたのだ。
プロでのキャリアも当初の背番号は131。育成枠からのスタートだった。