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カナダが用意していた「対錦織コート」。
相手の策を逆手に取った2勝の内実。 

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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photograph byHiroshi Sato

posted2015/03/10 11:15

カナダが用意していた「対錦織コート」。相手の策を逆手に取った2勝の内実。<Number Web> photograph by Hiroshi Sato

対戦後のラオニッチは「互いにチャンスはあったと思う。ギリギリの接戦だったはずだ」とコメント。

まるで錦織のために用意したサーフェスかのように。

 現地入りした当初、錦織は球足の速さに慣れておらず、植田監督は初日のシングルスで格下のポシュピシルに敗れることも覚悟したという。しかし錦織はたちまち適応し、長く慣れ親しんだコートであるかのように打ちまくった。

 寸分の狂いもないタイミング。いくつか気持ちがはやってボールを抑えられないミスがあったものの、差し込まれたり、無理やりねじ込んだショットはほとんどない。錦織はこのサーフェスを完全に掌握しているように見えた。

 前週、錦織が戦ったメキシコ・アカプルコ大会のコートは極端に球足が遅かったという。そこでウィナーを決めるのは至難の業だったはず。それにひきかえ、この2試合の錦織はいかにも心地よさそうだった。ラオニッチ戦では、フォアハンドだけで20本のエースをたたき出した。

 まるで、錦織のためにわざわざ球足の速いコートを用意したような恰好だ。最後に勝ったからよかったようなものの、これにはカナダの首脳陣も冷や汗をかいたに違いない。

「本当は僕は遅めの方がやりやすいが、速いコートにしっかり対応できていた。そういう柔軟さもこれから必要」

 と錦織。確かに彼はこのコートにうまく対応したが、これを「速いコートへの適性を見せた」と言い換えても間違いではないのではないか。

速いコートでも存分に戦える資質を見出した錦織。

 錦織が球足の遅いコートを好むのは、ボールを捕らえるタイミングを変えたりポジションを工夫して、テンポを自在に操ることができるからだろう。球足が速ければ速いなりのプレーをするしかないが、遅ければ自由にテンポを上げ下げできる。工夫の余地があることが、彼が遅いコートを好む理由だろう。

 しかし、その敏捷性(アジリティ)と俊敏性(クイックネス)、そして時間と空間に対する調整力を見れば、速いコートにも適性があることは容易に理解できる。

 実際、2012年には、まだサーフェスを塗り替える前の、球足の速かった有明コロシアムで楽天オープンを制している(奇しくも決勝の相手はラオニッチだった)。

 錦織は今回、あらためてその適性を披露したと言っていいだろう。ここで得た経験値、コートが速くても自分のプレーができるという自信は、今後の戦いに生かされるに違いない。

 それにしても、デ杯戦という重圧のかかる舞台で、眠っていた適性を呼び覚ましてしまうとは――。

 この男は、まだまだ底知れぬ力を秘めているのだろうか。

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