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なぜアロンソは今も静養中なのか?
憶測を呼ぶ、マクラーレンの情報隠蔽。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byREUTERS/AFLO
posted2015/03/03 11:10
バルセロナの病院を退院するアロンソが集まったファンに笑顔で手を振る。その後、スペイン国内にある自宅に戻って療養を続けることが発表された。
「感電説」「有毒ガス説」には根拠がある!?
このような事故が発生したとき、チーム側が「アロンソは命に別状はないから、事を荒立てないでほしい」という気持ちになるのは理解できる。しかし、ヘリコプターで病院へ搬送するには、それなりの理由があったはずだ。
なぜ、サーキットからバルセロナ市内の病院へヘリコプターで搬送されなければならなかったかを、まずはきちんと説明すべきではなかったか。
しばらくしてチームは、アロンソが脳震盪(のうしんとう)を起こしていたことを明らかにしたが、最初にその事実を発表していれば、その後に飛び交うこととなる、「感電説」や「有毒ガス説」といったさまざまな憶測は生まれず、いたずらにファンの不安をあおることもなかったに違いない。
マクラーレン・ホンダのマシンには問題が無い、と発表。
その後の発表にも、疑問が残る。
事故の翌日、マクラーレンは次のような発表を行っている。
「事故前、事故中、事故後のいかなるときも、クルマのERSシステムに異常はまったく発生しておらず、アロンソが電気的なトラブルによって意識不明になったという噂を否定したい。アロンソが事故の直前まで意識があったことは、コンクリートウォールへ接触する直前までブレーキを踏み続け、シフトダウンしていたことが証明している」
そして、最終的に「今回の事故は、あの時間、あの場所で吹いていた想像以上の激しい突風に起因したもの」だと結論付けた。
マクラーレンも、ホンダも、市販車を販売している企業であるから、今回のような事故が起きたとき、まずドライバーの安全を確認し、次にマシンに問題がなければ、そのことを発表したいという気持ちが働くことは理解できる。
しかし、ここでも私たちが本当に知りたいのは、事故の責任がチーム側にあったかどうかというようなことではない。
それよりも、事故の瞬間、アロンソのマシンはどれくらいのスピードが出ていたのか。また、そのときアロンソの肉体、特に頭部にどれほどのGフォースが加わったのか。そして、脳震盪によってアロンソはどれくらいの時間、意識がなかったのかというアロンソ自身の症状に関する客観的事実が知りたいのである。