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「最高ではないわりに勝っている」
錦織、以前と違う16強進出の“本心”。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byAAP Image/AFLO
posted2015/01/25 11:45
ジョンソンに勝利し、4年連続4回目の16強入りとなった錦織。全豪で準決勝以上に進めば世界ランク4位も見えてくる。
「ずっと挑戦者の気持ちでいられるわけではない」
日本語の記者会見ではオブラートに包んだが、英語でのやりとりの中で、その内心を覗くことができた。
「(世界ランキング)5位になって、トップ10に入る前よりだいぶ自信が出てきた。ただ、重圧も増している。ランキングのことは考えないようにしているが、それでも少しは重圧を感じるし、このランキングは僕にはまだ居心地がいいものではない。慣れるにはもう少し時間がかかると思う」
5位の椅子に初めて座った時から、その立場の難しさは予想していた。
「ずっと挑戦者の気持ちでいられるわけではないと思う」
4強入りしたATPワールドツアーファイナルズのあとで、錦織が2015年シーズンの見通しを語った中でのひとことだ。
下位の挑戦を受けて立つ難しさ。
その中でみずからも挑戦者の気持ちを保つことの困難さ。
想定はしていても、実際に四大大会で「第5」という高位のシードがつくのは初めてだ。父親の清志さんは、今のポジションに慣れるまでに「半年くらいはかかるんじゃないか」と見ている。今まさに錦織は、自分の地位と戦っている。
集中して、攻めの気持ちを持って……。
それでも、第2セット序盤の3ゲーム連取で主導権を掌握した。重圧を振り払うかのように、ラケットを思い切り振った。ボールが伸びるようになり、その分、ジョンソンのショットの精度が落ちていく。
そこには別人の錦織がいた。
「ジョンソンのバックハンドにばかり集めていたので、勇気を持って、(相手の武器である)フォアハンドに打ったり左右両サイドに振るようにした。第2セットの最初が攻め時だと感じていたので、集中して、攻めの気持ちを持ってプレッシャーをかけていこうと思った」