プロ野球亭日乗BACK NUMBER
世界で通用する内野手育成のために、
“基本至上主義”から脱却せよ!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2015/01/16 10:40
昨季はヤンキース傘下1Aのチャールストン・リバードッグスでプレーした加藤。二塁手のレギュラーとして121試合に出場した。メジャー昇格へ、20歳の挑戦は続く。
日本人でも、教育次第でメジャー流の守備ができる。
加藤は父親の仕事の関係で米・サンディエゴで育ち、アメリカと日本の国籍を持ってはいるが、両親とも日本人という生粋の日本人である。ただ野球を覚えたのはアメリカで、現地の子供たちと混じって野球を始め、ランチョ・バーナード高校での活躍がヤンキースの目に留まって指名を受けている。
加藤はドラフト時点でも、そのバッティングとともに流れるような守備のうまさでも高い評価を受けていた。今季は1Aに昇格して主に二塁を守っているが、ボールに対する流れるような体の動きは、中南米出身かと思う華麗さがある。特に二塁での併殺プレーで見せる、ステップからサイド気味にスナップを効かせた送球は、まさに日本の“常識”にはないものなのである。
要は身体能力ではなく、教育で日本人でもこういうプレーができるということを示してくれたのが加藤だったわけである。
立浪は高校時代から本当に守備の上手い選手だった。基本を徹底的に叩き込まれ、バックハンドでの捕球やスナップスローなどは雑なプレーとして極力避けるようになっていた。
ただ、もし立浪ほどのセンスのある選手が、最初から型にはめるのではなく、ボールの流れに応じて、一番合理的な動きができるように子供の頃から教え込まれていたら、どんな選手になっていたのだろうか、とも思う。
基本から外れることを徹底的に矯正する固定観念。
いま日本の野球界、特に少年野球や高校野球の指導では多くが固定観念に支配されている(全てとは言わないが……)。
基本ができなければ、応用はない。だから子供の頃は、基本を守らせて、そこから外れるプレーは徹底的に指導者によって矯正される。そういう指導が正しいという固定観念だ。
しかし、少し考え方を変える必要はないだろうか。基本を教えることはもちろん大事だが、もっと大事なことはいかに合理的なプレーができるか。そのためにはあらゆる方法があるということを子供の頃から体に染み込ませる。そういう教育こそが、世界で通用する選手を育てるために必要な道ではないかということだ。
バックハンドやベースカバーの動きに合わせたサイドからのスナップスローなどは、雑なプレーではない。それが自然にできるようになれば日本人内野手も決して、メジャーで通用しないわけではないということである。