プロ野球亭日乗BACK NUMBER
世界で通用する内野手育成のために、
“基本至上主義”から脱却せよ!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAFLO
posted2015/01/16 10:40
昨季はヤンキース傘下1Aのチャールストン・リバードッグスでプレーした加藤。二塁手のレギュラーとして121試合に出場した。メジャー昇格へ、20歳の挑戦は続く。
日本人内野手の苦戦は、身体能力が原因なのか?
このように日本人内野手がメジャーで評価されない一番の理由として、身体的な能力の差が指摘されることが多い。特に二遊間のポジションには身体能力の高い中南米の選手がひしめいている。そういう選手と比べると、日本人選手の守備力や肩の強さはどうしても見劣りするということだった。
個人的な身体能力という点で、おそらくこれまでの日本人選手で最も秀でていたのは松井稼頭央内野手だった。しかしその松井も、ニューヨーク・メッツに移籍した直後はまだ若手だったホセ・レイエス内野手を押しのけて遊撃のポジションを与えられたものの、結局、守備の問題から二塁へとコンバートされてしまう。また、タンパベイ・レイズのリーグ初優勝に貢献した岩村明憲内野手も、決してバッティングが通用しなかったわけではなかったが、二塁上のクロスプレーの守備で膝の靭帯を断裂。それが原因で、メジャーでのプレーを断念せざるを得なかった。
近い例ではミネソタ・ツインズと3年契約した西岡剛内野手も、やはり二塁上のクロスプレーで左すねを骨折して、わずか71試合の出場で契約を破棄して日本に戻ってきた。オークランド・アスレチックスと契約した中島裕之内野手も、結局は守れるところがなく一度もメジャー昇格ができないままに、今季オリックスへの日本復帰を果たしている。
井口「日本人にはメジャーでショートはムリだと思う」
最も成功した日本人内野手である井口資仁内野手は、'05年にシカゴ・ホワイトソックスに移籍すると1年目から3年連続135試合以上に出場して、チーム世界一の原動力と評価された。その井口本人も「日本人にはメジャーでショートはムリだと思う」と身体能力の差を指摘している一人である。
ただ、である。
アフリカ系アメリカンの選手やアングロサクソン系の選手はもとより、決して体がそんなに大きくない中南米系の選手にも日本人選手は身体能力で劣っているのだろうか?
一つの答えを見たような気になったのは、2013年のドラフトでニューヨーク・ヤンキースの2巡目指名を受けた加藤豪将内野手の守備を見た時だった。