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“文系野球の聖地”の書店が選ぶ
2014年「野球本」アワード、1位は!?
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2015/01/14 10:40
ファン垂涎の「野球本」が積み重なるOBCTDCの棚。店内の一角には巨人軍選手のポスターやつば九郎のサインなども飾られている。
「この頃は野球本も懐古的な方向に振れている」
●第7位 「意識力」(著:宮本慎也 PHP研究所)
2013年に東京ヤクルトを引退した宮本慎也の新書。2000本安打を達成するなど一流選手としてプロの世界で活躍した宮本が現役時代、野球に取り組むうえで心掛けていた、その差がプレーや結果を変えていくという“意識力”にフォーカスした一冊。3月発売。
「ヤクルトと西武の本は売れない……というかそもそも発売が少ないので、つば九郎本以外はランキングには入ってこないんですけどね。これは売れましたよ。イメージとしては30代の働く女性が買っていく感じです」
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――ヤクルトものといえば……当連載でも御馴染みヤクルト芸術家のながさわたかひろ氏が作品集『プロ野球画報 東京ヤクルトスワローズ全試合』(ぴあ)を昨年末についに発売にこぎつけましたが、売れ行きは如何でしょうか?
「いや、すごい内容だとは思うんですけど……。本屋から言わせてもらえば……12月って発売時期が悪いですよね」
●第6位 『君は山口高志を見たか 伝説の剛速球投手』(著:鎮勝也 講談社)
'70年代の阪急黄金時代を支えた剛速球投手、山口高志の幼少期から引退後までの野球人生を徹底取材のもとに書き下ろした作品。小さな身体ながら史上最速といわれるストレートを投げ、実質わずか4年間で燃え尽きた「太く短い」天才投手の生き様が胸に迫る。10月発売。
「これはとてもいい本でしたね。だけど、発売した時期が悪くてもったいなかった。時期がもうちょっとよければ、3位以内にランクインするぐらい売れたでしょうね。野球本というよりも、昭和史、歴史書みたいな感じですね。
この頃は野球本の傾向も懐古的な方向に振れている気がします。10月末に出た『洲崎球場のポール際 プロ野球の「聖地」に輝いた一瞬の光』(著:森田創 講談社)も、いい本だったなぁ。やっぱり時期が悪いからランクに入らなかったですけど」
――面白かったですね。野球本はもはや歴史小説を読んでいるかのようですよね。
「野球本の全体的な傾向として古い野球、懐古的な作品がよく出ていますね。その一方で、昨年は'80年代のパ・リーグを扱った本がかなり出ましたが、あの時代のパ・リーグ、特に近鉄南海阪急モノの人気は高いですね。売れる順で言えば、'88年に身売りした南海に阪急ときて近鉄。なくなった順に売れている感じです」