F1ピットストップBACK NUMBER
F1復帰のホンダに集まる熱烈な期待。
最強ドライバーを得て、勝算は?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/12/21 10:40
12月11日にようやく来季体制を発表したマクラーレン・ホンダ。左から新井康久総責任者、ジェンソン・バトン、ケビン・マグヌッセン(テスト兼リザーブドライバー)、フェルナンド・アロンソ、ロン・デニスCEO。
「ホンダとともに経験したトラブルは、ボーナス」
マクラーレン側からも、アブダビのテストでホンダのパワーユニットを採用する決断をしたことに微塵の後悔も感じられなかった。
「そもそも、このテストはマクラーレンとホンダ双方のシステムチェックが主な目的。だから、ホンダとともに作業して経験したトラブルは、我々にとってはボーナスのようなもの。これで来年2月にスタートする新車でのテストへ向けた準備が明確になった」(同上)とまで言っていた。
現役最高のドライバーの憧れも、ホンダだった。
ホンダと仕事をすることに胸を躍らせているのは、マクラーレンのスタッフだけではない。アブダビのテストから15日後の12月11日、そのマクラーレン・ホンダに大いなる希望を持って加入した者がいる。2005年と2006年の王者、フェルナンド・アロンソだ。記者発表の席上でアロンソは言った。
「子どものころ、僕の部屋には1枚のポスターが貼ってあった。それは憧れのドライバー、アイルトン・セナが乗っていたマクラーレン・ホンダだった。だから、いまその伝説のマクラーレン・ホンダの一員に加われたことをうれしく思う」
現役最高のドライバーが加わったとはいえ、アブダビでのテスト結果を見れば、「2015年にホンダは勝てる」と軽々しく言うことは難しい。しかも、戦うべき相手は2014年シーズンのF1を席巻し、すでに大きなアドバンテージを築いているメルセデスである。ルノーもフェラーリも歯が立たなかった結果を見れば、ホンダが1年目から勝利することは至難の業といっていいだろう。
それでも、1980年代に黄金時代を築いたマクラーレンに選ばれ、アロンソとバトンの最強ドライバーコンビを得たホンダは、そう簡単に負けるわけにはいかないのである。そのことは、今回ホンダF1の総責任者を務める新井康久もよく理解している。
「やるからには、1年目から勝つつもりでレースをやる。『1年目は練習です』という気持ちでレースするくらいなら、やめたほうがいい。マクラーレンと組むというのは、そういうことだと思っています」
すでに退路を断つ覚悟はできているようだ。