女三代フルマラソンに挑むBACK NUMBER

女三代、ついに本番の大阪マラソン。
まさかの結果、そして驚きの発言が! 

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中島彩

中島彩Aya Nakajima

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photograph byAya Nakajima

posted2014/10/30 15:20

女三代、ついに本番の大阪マラソン。まさかの結果、そして驚きの発言が!<Number Web> photograph by Aya Nakajima

大阪の町を走る女三代。序盤はいたって順調なペースで走っていたが……。

残り5kmの看板は見えていたが……。

 足を引きずって歩く祖母に、沿道からさらに力強くエールが送られます。

「あんたら、ほんま偉いわ! 希望やわ!」という温かい言葉。

 一方で、制限時間が刻一刻と迫ることでいやおうなくリタイヤという言葉が頭に浮かび、その悔しさで私も涙をこらえるのに精一杯。そして37kmを過ぎ、残り5kmの看板が見えました。

「もうちょっとや!」

 母がそう叫んだすぐ後に、最後尾の車に追い付かれ、私たちのレースは終わりました。38km関門目前、目の前には南港の海が広がって、まさに「ゴールは目と鼻の先」でした。

 祖母は悲しそうに「もう走られへんの?」と、聞きました。

「大会のルールやからね、よく頑張ったよ」

 と私が答えると、三世代に沈黙の時間が流れました。

「あと少しやったのに」

 と母は涙を流しています。“祖母を完走させたい”という気持ちがそれほど強かったのでしょう。

まさかの、マラソン再挑戦宣言。

 79歳という歳を考えれば、完全な自力で29km、私に引っ張られながらさらに9kmで合計38km、よく頑張ったと思います。最後まで祖母は救護所も拒否し、止めたいと言いませんでした。祖母の心は完走だけに向いていたのです。

 ただ37km以降、祖母の足は1km12分で歩くのが限界でした。

 コース脇の縁石に座りこんで、祖母は疲れた表情、母も気落ちした様子でした。収容バスに乗ってからも、ほぼ沈黙の3人。会話もない中、バスはゴール会場のインテックス大阪に到着。3人で手をつないでくぐる予定だったフィニッシュゲートが目に飛び込んできます。

 すると、ゲートを見た祖母が急に言葉を発しました。

「彩ちゃん、千恵ちゃん、私決めたわ! 3月にフルマラソンもう一度走る。そして、大阪マラソンでもう一度完走する!」

 リタイヤ直後、疲弊しているはずの祖母が発した再挑戦の宣言でした。

【次ページ】 「お願いやから、来年まで練習つきあって!」

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中島彩

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