サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
U-21代表、痛恨のPKで韓国に敗戦。
「我慢」の次は、リズムを変える力を!
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byAFLO
posted2014/09/29 16:30
世代的にひとつ上のフルメンバーを揃えてきた韓国に、五輪を見据えた選考の日本は終始押し込まれる展開。それでも体を張って守り、確かな成長を掴み取った。
後半42分に与えてしまった痛恨のPK。
ところが後半42分。延長突入が視野に入ってきた時間帯に、大島がペナルティーエリア内で痛恨のファウルを犯してPKを与えてしまう。これを元FC東京のチャン・ヒョンスに決められ、試合はそのまま終了。それまで耐えに耐え抜いていただけに、結果は悔しいものだった。
しかし、手倉森監督は無念さよりも手応えを強調した。
「きれいにサッカーをやりたがる選手たちが、体を張って、顔面でもクリアしていた。強豪国でない日本にとっては、そこが一番大事なベースになる部分。タフに戦う覚悟を選手たちが見せてくれた」
もちろん、試合を細かく振り返れば気になった点は少なくない。植田は前半28分に自陣PA内でクリアミスを犯してヒヤリとさせた。
左サイドではサイドバックの秋野央樹とサイドハーフの矢島慎也のポジショニングが悪く、韓国の右サイドバック、イム・チャンウにボールを持たれてはドリブルで一気に攻め上がられ、何度もピンチを招いた。
矢島は「大島君と(遠藤)航くんがスライドした横のスペースを使われるのが怖かったので、ちょっとそこを絞りすぎたかもしれない。もっと僕が外側にポジションを取っても良かった」と反省していた。
メンタル面、そして戦術面に大きな収穫が。
技術はあっても気持ちが前面に見えてこないなど、メンタル面でのパンチ不足を指摘されてきたリオ世代。その彼らが、初めて泥臭さを見せた試合。そこに成長を見ることができた一戦。それがアジア大会日韓戦だった。
収穫はメンタル面以外にもあった。手倉森ジャパンの特徴である、自在なシステム変更が機能していたことだ。
韓国戦のスタート時のシステムは4-2-3-1だったが、0-0だった後半19分にMF野津田岳人を下げてFW荒野拓馬を投入したタイミングで、荒野と鈴木の2トップにする4-4-2にシステムを変更。相手のロングボールの出どころにプレッシャーを与えることで、前線にボールを出しにくくさせた。
鈴木と荒野の距離が近いことで前線の動きも活性化し、日本は次第にチャンスを作っていった。この日最大の決定機だった後半32分の矢島の右ボレーシュートが生まれたのもこの時間帯だ。
試合が残り約10分となり、より一層点が欲しい状況になった後半34分には、足の攣ってしまった矢島を下げて原川力を投入し、4-3-3にした。遠藤は「僕がアンカーになったときは2ボランチに対して(原川)リキと(大島)僚太がプレスを掛けてチャンスになりそうなときもあった。僕が見るに、相手は4-3-3の方を嫌がっていたと思う」と分析した。いろいろな引き出しを持つという手倉森スタイルが、しっかり実を伴って前進している印象だ。