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知られざる欧州組・瀬戸貴幸がELへ。
2億円を蹴った男のルーマニアでの夢。 

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朴鐘泰

朴鐘泰Park Jong Tae

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photograph byGetty Images

posted2014/09/18 10:50

知られざる欧州組・瀬戸貴幸がELへ。2億円を蹴った男のルーマニアでの夢。<Number Web> photograph by Getty Images

昨シーズンは2億円のオファーを蹴ったことで「干された」という瀬戸貴幸。今季は、クラブにとっても本人にとっても、勝負の年となる。

給料遅配による練習ボイコットも「当たり前」。

 しかし9月第2週の試合を控えた、あるウィークデーの練習日。キャプテンを中心に、選手たちが監督にこう言い寄った。

「監督、僕たち今日、練習しませんから」

 選手総出の練習ボイコットには、確固たる動機があった。3カ月も選手たちに給料が支払われていなかったのだ。監督が答える。

「わかった。君たちの主張は正しい」

 傍から見れば、チームの存亡がかかる一大事である。現にその週末のリーグ戦は1-4で落とした。それでも、瀬戸は軽やかに言う。

「いや全然大丈夫です。ルーマニアじゃこんなの当たり前というか、僕はここに8年もいるから、もう何とも思わないですよ」

「日本人選手がいるチームとやってみたい」

 現在はクラブも落ち着き、いよいよ瀬戸待望のEL開幕が目前に迫っている。アストラはディナモ・ザグレブ(クロアチア)、セルティック(スコットランド)、ザルツブルク(オーストリア)と同じグループDに入った。

「フランスのリーグアンで7連覇を達成して、CLでもベスト4にいったことのあるリヨンに勝ったことで、チーム内にはかつてないほどの自信が溢れています。僕的にはこの組み分けは非常に興味深いですね。他の3つ、全部日本人選手に縁のあるクラブですから」

 かつてディナモ・ザグレブには三浦知良、セルティックには中村俊輔と水野晃樹、ザルツブルクには宮本恒靖と三都主アレサンドロが在籍した。

「まず目標はグループステージを突破すること。そしてできれば、同じ日本人選手がいるチームとやってみたいですね」

 瀬戸のアストラ以外に日本人選手が在籍するEL出場チームは、長友佑都のインテル(イタリア)、川島永嗣のスタンダール・リエージュ(ベルギー)、久保裕也のヤングボーイズ(スイス)の3つだ。

 実は昨年10月、アストラの試合にザックジャパンのスタッフが視察に訪れている。ちょうど日本が東欧遠征を行なったタイミングだった。残念ながら代表招集の声が掛かることはなかったが、それ以来瀬戸は「自分はちゃんと見られている」という意識を強く持つようになった。

 ELという夢は叶えた。そのELの先に、日本代表というもう一つの夢がまだおぼろげながらも、前より輪郭は濃く見え始めた。

 アンダー世代の代表経験もなく、日本でプロになれなかった男が欧州で紡ぐ夢物語。瀬戸貴幸の新たな挑戦はアウェーの地・クロアチアの9月18日(日本時間19日午前2時)、ディナモ・ザグレブとのEL初戦でまた始まる。

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