Jをめぐる冒険BACK NUMBER
勝ち点53からJ1残留へ目標を変更。
迷走大宮のフロント力を問う。
posted2014/09/06 10:40
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
大宮アルディージャが大熊清監督の解任を発表したとき、「ああ、やっぱり」と納得したのと同時に、どこかホッとする気持ちもあった。浦和レッズとのさいたまダービーに0-4で敗れた翌日、8月31日のことだ。
前日、試合後のミックスゾーンでは大宮の選手たちが一様に思いつめたような表情をしていた。
「やるのは監督ではなく、自分たちだから」
「選手が戦術の部分に原因を求めたら、成長できないので」
「どうすればいいんですかね……」
「戦術うんぬんの前に、僕らの力不足だと思います」
これまでの経験上、こうした言葉が選手の口から聞かれるようになると、監督との信頼関係にヒビが入っていることが多い。
監督の指導なり、戦術なりに不満を抱えているけれど、公の場で監督批判、チーム批判をするわけにはいかない。ところが、ミックスゾーンでメディアからチームの現状や低迷の原因を訊ねられるため、こうした回答が増えていく。
耳を傾けていて、彼らの言わんとすることや、口にしたくてもできない気持ちが伝わってくるから、こちらもいたたまれない気持ちになってしまう。
こんな状況は、選手にとっても監督にとっても不幸でしかない。フロントは早く決断したほうがいい――。そう思っていた矢先に飛び込んできた解任の報だった。
大熊監督とその教え子たちを招いたが、下位に低迷。
昨季、8節から16節まで首位に立ちながら、最終的に14位でシーズンを終えた大宮は今季、かつてFC東京やユース代表を率いた大熊監督を迎え、立て直しを図ろうとしていた。
家長昭博や増田誓志、中村北斗ら、指揮官のかつての教え子たちを招き入れ、戦力補強に余念がないように見えたが、メンバー構成やシステムがコロコロと変わり、何を強みにして戦おうとしているのかが感じられず、下位に低迷した。
7月にはセルビアリーグで二度の得点王に輝いたセルビア代表FWのムルジャを獲得したが、W杯中断後のリーグで3分4敗と勝てず、17位でJ2降格圏内にどっぷりと浸かったまま――。そんな状態で迎えたのが、首位に立つ浦和とのダービーだったのだ。