Jをめぐる冒険BACK NUMBER
勝ち点53からJ1残留へ目標を変更。
迷走大宮のフロント力を問う。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2014/09/06 10:40
目標を勝ち点53から残留に変更したことを示す大宮サポーターのフラッグ。奇跡的な残留を何度も実現したクラブは、今年も生き残ることができるのか。
低迷の原因は選手、監督だけにあるのか。
ところが浦和戦での大宮は、相手にボールが渡ったのに、その場に立ち尽くしている選手がいたり、1対1で簡単に競り負けたりマークを外したりと、まさに本質の部分で大熊監督のチームらしさが見られなかった。
これでは大熊監督が率いる理由はなく、解任もやむを得ない。むしろ決断が遅すぎたと言えるかもしれない。
チームが低迷している以上、監督が責任を問われるのは当然だ。また、選手たち自身も話しているように「やるのは自分たち」なのだから、プロの集団として相応しいプレーや振る舞いをしていたのか、胸に手を当てて自問する必要もある。
だが低迷の原因は、なにも“現場”だけにあるわけではないはずだ。
大宮のフロントは、これで3年続けてシーズン途中に監督を交代させている。鈴木淳監督→ベルデニック監督→小倉勉監督→大熊清監督という流れに、未来へのビジョンやたしかな基準は見出せず、登用の狙いをどうにも図りかねてしまう。
しかも、昨季4位の時点でベルデニック監督を解任した際は「チームとして今シーズンの目標を達成するため、監督交代を決断しました」との代表取締役社長のコメントがホームページに掲載された。
一方、今回は「目標の勝点53以上の達成が不可能となり、また今後J1残留を考えた時に新たな体制にすることが必要と判断いたしました」というコメントが発表されている。
昨季はミッション達成のために監督のクビを切ったのに、今季はなぜ、ここまで引っ張ったのか――。そんな疑問が当然のように湧いてくる。
監督人事を説明できるフロントはどれだけあるだろうか。
もっとも、監督人事にまつわる不可解さは、大宮に限った話ではない。
なぜこのタイミングで、この監督なのか、しっかりと説明できるフロントが果たしてどれだけあるだろうか。
もちろん勝負の世界だから、理に適った登用であっても躓くことはある。反対に、代理人の言いなりで、よく知らないまま雇った指導者が“アタリ”だったこともあるだろう。
だが、そんな“偶然”が何度も続くことはない。不可思議な監督人事を繰り返しているうちに、クラブがそれまで築き上げたものを手放すことになりかねない。