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アンジャッシュ渡部建が考えた、
“超スローカーブ”と“機動破壊”。
posted2014/09/01 16:30
text by
渡部建Ken Watabe
photograph by
Production JINRIKISHA
メルマガ「アンジャッシュ渡部建の『濃厚野球汁』」。
最新号の中身をちょっとだけ……特別にご紹介いたします!
目次
【第1打席】「東海大相模が初戦で散る。勝敗を分けたのは投手の継投か?」
~私的相模敗因推察~
【第2打席】「北信越勢と東北勢の躍進。高校野球に地域格差はない!!」
~私的地域活性期待値~
【第3打席】「健大高崎・脇本、富山商・森田。株を上げた注目選手たち」
~私的有望選手リストアップ~
【第4打席】「超スローカーブと機動破壊は、素晴らしい戦術ですよ!」
~私的戦術否定提言~
【第5打席】「やっぱり強かった大阪桐蔭。西谷監督の勝率、ハンパない」
~私的桐蔭強豪論~
【第6打席】「『超黄金世代』の誕生には法則が! 楽しみは2年後か?」
~私的黄金世代誕生理論~
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【第4打席】「超スローカーブと機動破壊は、素晴らしい戦術ですよ!」
~私的戦術否定提言~
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――今年の夏は色んなことがありました。高校生はひたむきにプレーしているだけなのに、それが批判されたり……。
渡部:あぁ……。
――まず、東海大四・西嶋の超スローカーブからいきましょうか?
渡部:っていうか、西嶋君の超スローカーブを否定したのって、あの方だけですよね(元フジテレビアナウンサー・岩佐徹氏)。結果的に、大々的に話題になったけど、それがなかったら「すごい!」と注目されただけの話で。
――確かに。ダルビッシュの「自分としては一番難しいボールだと思っています」っていうツイッターでの発言が全てですよね。
渡部:だと思う。知り合いに話を聞いたら、超スローカーブは西嶋君が一番練習していたボールで、投球練習の最後に1時間くらいあのボールだけを投げていたみたいなんですよ。つまり、彼にとっても一番、習得するのに苦労したボールってわけですよね。全然、人生ナメてないですよね。
――そもそも、甲子園の大舞台であのボールを投げられるメンタルがすごい。
渡部:西嶋君があの超スローカーブを投げると、他の選手たちが「今日の西嶋は落ち着いているな」って感じるらしいんですよ。あのボールがチームを安心させてくれるひとつのバロメーターなんですね。あれがあったから、優勝候補の九州国際大付属に勝てたと言ってもいいくらいで。
――そうだったんですか。
渡部:あの問題は少なからず西嶋君の耳に入っただろうし、彼自身、悔しかったんでしょうね。次の山形中央戦でも、投げづらかったかもしれないけど1球投げた。素晴らしいですよ!
――できれば、相手に打ってほしかったですけどね(笑)。
渡部:そうなんですよ! これね、僕、山形中央の庄司監督がすごいなと思ったエピソードがあって。試合前に、選手たちに「超スローカーブを打ってもいいよ。でも、飛ばないからな」ってアドバイスしたらしいんですよ。普通なら、「あれはボール球になるから振るな」とか、「狙っていけ」とか言うのかもしれないけど、ちゃんと打った場合を教えてあげたわけです。それなら、選手たちも納得しますよね。
――まあでも、普通にいいピッチャーでしたよね。
渡部:うん。本当に、丹念に低めを突いたピッチングをしてね。コントロールは抜群だったし、「ただの超スローカーブのピッチャーじゃないな」ってことを印象付けましたよね。スタンドのファンはもちろん、審判も味方につけた感じがしましたもん。2回戦で負けちゃったのがもったいなかったなぁ。西嶋君は社会人に行くみたいなんで、今後の活躍に期待したいですよ!
「8点差、9点差あっても油断しちゃいけない」を象徴。
――で、次の話題に移りますが。今度は健大高崎の盗塁です。
渡部:あぁ……。
――利府戦で大会記録の13に迫る11盗塁をしたことが、「大人気ない」だとかネット上で批判されまくりました。
渡部:批判されることがナンセンスと思っちゃいますよねぇ。
じゃあ、仮に石川大会の決勝で、小松大谷が健大高崎と同じように盗塁をしまくって、8-0になったあたりでいよいよスタンドからブーイングが起こったから盗塁するのを止めました。それで、9回裏に星稜に9点を取られてサヨナラで負けました。そうなったら、小松大谷の選手たちの努力は報われなかったって話になりますよね。
今年の甲子園では、初回に8点も取られた大垣日大が、最終的に12-10で藤代を倒したっていう前例があるわけですから、「8点差、9点差あっても油断しちゃいけない」ということを象徴した年だったわけですよ。だから、「選手たちが一生懸命に練習して身に付けた技術を、全国の舞台で発揮するのはいいに決まってます!」っていうのが僕の考えです!
――健大高崎はアップで1時間、全体練習でも1時間と計2時間、毎日、走塁練習をして技術を身に付けたようですからね。
渡部:1番バッターの平山(敦規)君でしたっけ、大会タイ記録の8盗塁したの?
――そうです。
渡部:平山君とか脇本君とか、健大高崎の走塁は洗練されていましたよね。スライディングにしたって、本来ならする直前にスピードが落ちるところなのに、そこからギューンって伸びる感覚があったし、ベースランニングにしても無駄がないし。まさに「機動破壊」でしたよね。対戦したチームも相当嫌だったと思いますよ。
健大高崎の走塁は、初出場した2011年から洗練されていて。樟南とか鹿児島実業とか、九州のチームからも練習試合に誘われたりとちょっとした「健大ブーム」があったって話は前にもしたと思うんだけど、そんな健大高崎でも盗塁できないチームがあったんですよ!