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藤浪晋太郎の課題は「投手の打席」。
巨人との頂上決戦で阪神が失った物。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/08/29 16:30

藤浪晋太郎の課題は「投手の打席」。巨人との頂上決戦で阪神が失った物。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

1年目の昨年、10勝6敗防御率2.75という数字を残した藤浪晋太郎だが、今年はここまで8勝7敗防御率3.67と苦しんでいる。

数字以上に巨人にとって大きい、阿部の復調。

 そして巨人のチーム事情からすると、澤村の好投以外にも、この3連戦は2勝1敗という数字以上に収穫があったシリーズだったということができるのかもしれない。

 主砲であり、チームリーダーでもある阿部慎之助に復調の兆しが出てきたことである。

 阿部は第1戦で3点を追う6回にメッセンジャーから左中間に15号2ランを放つと、9回の先頭で阪神の守護神・呉昇桓から右翼線二塁打を放ってサヨナラの口火を切った。また第2戦でも10回に左中間に16号を放つなど、この3連戦は9打数4安打2本塁打3打点に4四死球と爆発した。

 8月7日のDeNA戦から、原監督は阿部を13試合ものあいだ捕手ではなく一塁で起用した。またこの3連戦でも1、2戦は捕手、3戦目は一塁とポジションを替えて使っている。

「試合での負担を軽減するというよりは、試合前の練習をきちっとできるようにするためのポジション変更です」

 その狙いを監督はこう説明するのだ。

「捕手で起用するときは試合前にやることも一杯あるし、試合でハードなポジションという意識もあるので、どうしても練習をセーブしがちになる。その代わり一塁で使う日は、試合前にしっかり走って、ノックを受けて、スイングもして、と練習に集中してみっちりできる。そうやってコンディションを整えていったらどうだ、と本人にも話して“ありがとうございます”ということになった」

 原監督にとっては、その成果が結果としても出た3連戦というわけである。

“自力優勝”にほとんど意味はないが……。

 2.5ゲーム差となり、残る直接対決は9月9日から阪神の地元・甲子園での3連戦を残すのみ。

「(自力消滅は)数字のことはまったく気にしない。また甲子園で同じような状況で勝負できるようにしたい。少しでも差を詰めていくようにやるしかない」

 首位攻防戦を終えた阪神・和田監督はこう言って9月へと目を向けた。

 確かに直接対決以外で巨人の全勝を仮定とする“自力優勝”には、ほとんど意味はない。ただ、ここにきて1勝2敗と負け越しただけでなく、巨人にいい形を与えて敗れたこと。それが阪神にとっては一番、悔やまれる結果だったのではないだろうか。

 今日29日からはヤクルト3連戦。4週間ぶりに地元・甲子園に帰っての戦いということが、出直しへのせめてもの明るい材料というしかない。

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