ブラジルW杯通信BACK NUMBER
イタリア、ウルグアイにやぶれGL敗退。
真っ向勝負を壊したレッドと“凶行”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/25 16:30
試合中にもかかわらず、ベンチでふてくされるバロテッリ。プランデッリはアズーリを担う存在として期待をかけ続けてきたが、今回もまたその期待は裏切られた。
智将の辞任、そしてエースへの失望。
レッドカードと凶行がどれだけ不条理でも、ビデオ判定でスアレスがどれほど長期出場停止処分に追い込まれても、このゲームの勝敗はひっくり返らない。
スアレスは母国のメディアに「(噛みつき行為は)口が滑っただけ」とうそぶいた。
「相手が10人になった後、個人的にはリラックスしてプレーできた。国はお祝い騒ぎだろう。決勝トーナメントの相手が楽しみだ」
ウルグアイは“死の組”を勝ち上がり、王国の陽光を浴び続ける。
「私のプロジェクトは機能しなかった。ゆえに辞任の道を選ぶのだ」
試合後の会見で、プランデッリは突如イタリア代表監督を辞任する意志を表明した。ブラジル大会前に2016年まで契約延長したばかりとあって、イタリア協会は慰留する方針のようだ。だが、グループリーグ敗退の責を負って、アベーテ会長が辞任することは決定的となっている。
プランデッリは、マルキージオへの不当な退場とスアレスの蛮行を見逃したミスジャッジに異議を唱えながら、「バロテッリは重要な選手になるとずっと思っていた。しかし、どうやら彼は冷静さを保つべき時とそうでない時の区別がつかないようだ」と、問題児に固執した自らの技術的敗因を認めた。智将は力なく続けた。
「今大会でいくつかの国が見せているスピードとアジリティに驚いている。残念ながら、今のイタリア・サッカー(のリズム)では、この手の選手を生み出せない。われわれの課題は多い」
イタリアの明日は、まだ見えない。
4年前、理想に燃えて就任したプランデッリの夢は、世界の現実の前に挫折した。
「代表にとって、ここにいる選手一人ひとりにとって、悲しい日だ。挫折の日だ」
そう言いながら、代表主将ブッフォンの口調は怒りに満ちている。ピルロやデロッシ、そして自分自身など、いつまでもベテランを追い抜けない若手の不甲斐なさを叱責し、「グラウンドで試合に入っていない人間がいた」と、ある選手へ厳しい言葉を残した。
ドーピング検査を経たピルロは、チームメイトたちへ話をした。アズーリの賢人の言葉に耳を傾けようともせず、唯一人バスへ乗りこんだのは、代表のエースと持ち上げられてきたFWバロテッリだった。
悪童FWに賭けつづけたプランデッリのアズーリは、ナタールの地に砕け散った。
イタリアの明日は、まだ見えない。