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イタリア、ウルグアイにやぶれGL敗退。
真っ向勝負を壊したレッドと“凶行”。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/25 16:30
試合中にもかかわらず、ベンチでふてくされるバロテッリ。プランデッリはアズーリを担う存在として期待をかけ続けてきたが、今回もまたその期待は裏切られた。
マルキージオに提示された理解不能なレッドカード。
59分、ウルグアイのMFアレバロ目がけて、MFマルキージオは、背中から体を入れてボールを取りに行こうとした。危険性の欠片もないプレーだった。
ロドリゲス主審がマルキージオの方を向いて、宙にかざしたカードの色は、赤かった。
突然、ゲームは壊れた。
ここが勝負どころと見たタバレスは、すぐにFWストゥアニを入れ、攻撃のラインを押し上げた。
対するプランデッリが打った手は、10人となった緊張と疲労で消耗したチームに、残り20分を切ってからFWカッサーノとMFチアゴ・モッタのベテラン2人を送り出すことだった。
MFラミレスを加えたウルグアイは、攻勢をなお強めた。心身の均衡が崩れた試合の中で、ウルグアイの勝利欲は、いつしか獣性を帯びたものになっていた。
見逃されたスアレスの「歯形」。
「スアレスに噛まれた!」
79分、イタリアDFキエッリーニが、ユニフォームを肩口から大きく広げて、主審へ詰め寄った。
左肩には赤い歯形がのぞいていた。
過去に2度、スアレスが犯した噛みつき行為という凶行を知らない者はいない。
一発退場以外の選択肢がない状況で、ロドリゲス主審は何事もなかったようにプレーを続行した。
線審2人も、何のアクションも起こさなかった。試合は、彼らの審判としての力量を超えたところにあるようだった。
2分後の右CKで、ウルグアイは値千金の1点を挙げた。疲労しきった相手の緩いマークを振り切って、DFゴディンはヘディングゴールを右に突き刺した。
目の前で起こっていることを、イタリアの選手たちはまったく理解できなかった。それでも、彼らは瓦解する一歩手前で踏ん張った。
FWスアレスとFWカバーニによるカウンター攻撃を執念で防ぎ、気迫で押し返した。
ロスタイム得たFKに、GKブッフォンも相手ゴール前に飛び込んだ。しかし、及ばなかった。