ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
全米女子OP、舞台裏の悲哀と気概。
アマチュア野澤真央が手に入れた物。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2014/06/26 10:30
10歳からゴルフを始め、現在はクラーク記念国際高等学校の3年生の野澤真央。昨年は愛知県女子アマチュアゴルフ選手権などで優勝争いを演じた。ベストスコアは64。
補欠選手として渡米、しかし現地でトラブルが……。
残酷にも思えたのが、直後の表彰式だった。プレーオフ突入前の結果を受け、野澤は橋本ともにベストアマチュア(ローアマチュア)賞の表彰を受けることになった。本戦出場を決めた5人の笑顔の横でただ一人、目を真っ赤に腫らしていた。周囲からの拍手で、胸が張り裂けそうになった。「いつ思い出しても泣きたくなります」
そしてこの高校3年生は、再び厳しい現実と向かい合うことになる。泣きたくなるような思いは、海を渡っても続いた。
最終予選会のプレーオフまで残った野澤は、本戦で欠場者が出た場合の補欠選手として、出場可否が分からぬまま渡米を決めた。しかし当初は各国の予選会で補欠1番目の選手に、順番で出場権が巡ってくると聞いていたのだが、現地で大会側に確認すると、話が違う。
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ウェイティングの優先順位は米国20カ所で行われた予選会での補欠選手が上だった。つまり橋本は20名以上の辞退者が出ない限り、出場のチャンスが巡って来ない。状況は絶望的。予選制度変革の過渡期での、思わぬトラブルを受けた格好となった。
目の前の18ホールに、足を踏み入れられない。
ところが、彼女はこれで今回の挑戦を終わらせなかった。
翌週には、リベンジをかけて初優勝を狙う日本女子アマチュア選手権があったが、帰国を早めようとはしなかった。ほんのわずかな出場の可能性に賭けたためだけではない。
「来る前から、他の人には『行ってもお金の無駄だ』なんて言われました。でももし、もしも順番が回って来て、自分の代わりに出られる人がいた場合に『なんであそこで行かなかったんだろう』って後悔したくなかった。それに、(現地に)行ったら出られなくても絶対に何か吸収できるものがあるはずだって」
補欠選手は繰り上がり出場が決まるまで、練習ラウンドでさえコースを回ることが許されなかった。目の前に広がっている、とびっきり難しく、挑戦欲を掻き立てられる18ホールに足を踏み入れられない。