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法廷に舞台を移した“清武の乱”。
巨人お家騒動は「こどものけんか」?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2014/06/13 10:50
裁判では、巨人側が清武氏に1億円の損害賠償を求め、清武氏側が巨人と渡辺氏に6000万円の損害賠償を求めている。
足取りはおぼつかずとも、“ナベツネ節”は枯れず。
桃井社長に続いて渡辺会長が証言台に座ったのは、午前11時25分のことだった。
お茶のペットボトルを一口、グイッと飲んで弁護人席から立ち上がった渡辺会長。お付きの人が杖を差し出そうとしたのを制して証言台に向かったが、足取りは少しおぼつかない。それでも証言席に座るやいなや、いつも通りの“ナベツネ節”を炸裂させた。
争点となっているコーチの人事権に関しては、「代表の専権事項」とする清武氏に対して、「僕の承認が必要」と断言。その上で11年10月20日に桃井社長とともに清武氏が持参したコーチ人事案に対して「分かった」と言ったことが承認だったのかと問われると、発言そのものは認めたが、当時はまだクライマックスシリーズ前であり、シリーズの結果次第で監督の任期も変わり、コーチ陣容の変更はありえる状況にあったと主張。
「部下の説明に“分かった”というのは僕のクセ。その後に会食の約束があったので、分かりやすく言えば早く僕の前から消えてくれ、早く帰ってもらうために促した」
こう語って清武氏の「決定した人事を一取締役に過ぎない渡辺会長(当時)が鶴の一声でひっくり返した」という主張を真っ向から否定した。
法廷中に響き渡る大声での激しい抗議。
また11月11日に清武氏が独断で記者会見を行なった日のことに触れ「電話で説得して、清武くんも『分かりました』と言ったので、(会見は)やめるだろうと思った」と当時の判断を振り返った。
しかし結局、会見を強行したことについては「GM職を外されるという人事に対する私怨、憂さ晴らし」と断言。また証言中に清武氏側の弁護士が「聞いたことに答えてください」と注意すると「聞いていることに間違いがあると答えているんだ……アンタがねえ」と感情を露にして弁護士を指差すと、弁護士が法廷中に響き渡る大声で「指差すな!」と激しく抗議。
まさに感情とエゴをむき出しにした「おとなのけんか」を、裁判長が「お互い冷静にいきましょう」とたしなめる場面もあった。