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「鋼鉄の男」サネッティが遂に引退。
“4EVER”インテリスタの19年間。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/06/10 16:30
サネッティは引退後も「永遠の試合は、まだ始まったばかりだ」と語る。
いつの間にか小皺が増えていたサネッティの目元。
モラッティ前会長を初めとするインテル・ファミリー全員が顔を揃えた試合後の引退セレモニーで、サネッティは自らの家族に加えて、4年前に達成した“栄光のトリプレーテ(=CL、スクデット、コッパイタリアの3冠)”の立役者を傍らに呼んだ。
FWミリートとDFサムエル、MFカンビアッソの3人はアルゼンチンの同胞であり、苦楽をともにした長年の戦友でもある。主将は、さらに'10年夏から控えGKだったカステラッツィまでセレモニーの輪に加えた。シーズン後、やはりインテルを去ることがほぼ確定している彼ら4人への気配りに、サネッティの人柄が表れていた。
次期主将候補として名指しされたDFラノッキアは「サネッティはインテルのすべてだった。引退はとても寂しいけれど、彼の存在感がロッカールームから消えることはないだろう」と感極まり、長友佑都も「サネッティこそトップ。プレーヤーとしても、人としても偉大だった」とイタリアメディアに語っている。
セレモニーの胴上げでも、床屋の色褪せたモデル写真みたいなヘアスタイルは崩れなかった。けれど、いつの間にか小皺が増えていたサネッティの目元からは、今にも涙がこぼれそうだった。
サネッティと歩んだ歴史を、インテリスタは忘れない。
インテリスタたちは、歴史的悲劇の日付と流した涙を忘れない。
2003年5月13日、ミラノ・ダービーによって争われたCL準決勝は、アウェーゴール差によってファイナルへの道を絶たれた。サネッティはチームを統率する主将でありながら、あふれる涙を抑えることができなかった。
前年の5月5日には、クラブの悲願だったスクデットを最終節の自滅的大敗で逃し、ベンチで嗚咽を漏らすFWロナウドを慰めた。
艱難辛苦の時期が長かった分、ようやく訪れた栄光の喜びは倍増した。
主将として初めて戴冠した'05年のコッパイタリアを皮切りに、サネッティは貪欲にタイトルを獲り続けた。
145試合もプレーしたアルゼンチン代表では不幸にもタイトルと無縁だったが、インテルには世界中からスター選手たちが集まった。
「長い現役生活の間に、サッカー史に名を残すバッジョやロナウド、イブラヒモビッチのような偉大な選手たちとプレーできたことは大きな幸せだった。サモラーノやコルドバ、シメオネ……他にも数え切れないほど、多くの友達に恵まれた。私は本当に幸せだった」
しかし本当に幸せだったのは、サネッティと同じ時代を共有した彼らの方かもしれない。3つ年下のローマ主将トッティも「あんたこそ伝説の男だ」と、ライバルの引退を惜しんだ。