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野手転向と怪我を乗り越えた、
ヤクルト・雄平の“復活劇”。

posted2014/06/05 10:30

 
野手転向と怪我を乗り越えた、ヤクルト・雄平の“復活劇”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

5月28日、対日本ハム戦の4回、大谷翔平から9号ソロを放ったヤクルト・雄平。8回にも10号ソロを放ち、“二刀流”に別れを告げた29歳は、自身初のシーズン2桁本塁打を記録した。

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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Hideki Sugiyama

 '09年5月9日の対広島7回戦、ヤクルトの左腕・高井雄平は1-4でリードされた8回表に4番手として登板、1イニングを被安打1、失点0に抑えている。'08、'09年の2年間、0勝に終わっているが、東北高校卒の1年目に5勝を挙げ、'07年までの5年間で通算18勝(19敗)しているのをみれば、本格化するのはこれからだと私なら考える。

 しかし高井はこの試合以降マウンドには立たず、'11年からは登録名を「雄平」に変えて、野手として再スタートすることになる。

 東北高校時代の雄平は速球派として有名だった。高校球界にスピードガンが導入されて以来、左腕投手として150km台を超えたのは雄平が初めてである(MAXは151km)。コントロールは不安定だったが投球フォームに目立ったクセがなく、ボールが低めに集まる長所もあった。さらにゴロ処理のフィールディングや一塁けん制が非凡で、プロの投手として遠回りする要因は極めて少ないというのが私の評価だった。

高校1年の雄平は、打者の印象が強かった。

 初めて雄平を見たのは彼が東北高校の1年だった'00年秋の明治神宮大会、尽誠学園戦。このときの第一印象は実は打者としてのほうが強かった。当時私は『野球小僧』に、以下のような雄平評を書いている。

「東北高の左腕・高井雄平(1年・投手)のバッティングはよかった。ヘッドがスパッと抜ける打ち方で、左右両方向に鋭い打球を打ち分ける技術も備わっている。さらに俊足。これは相当目立った。

 プロで1、2番を打てる素材だが、左腕投手としてもサイド気味から140km台の鋭いストレートと、シュートボールを武器に高校生レベルでは高く評価されている。投手なら阪神の遠山タイプ。球質、持ち球までソックリ。しかし、投打を天秤にかければ素質のよさはバッター」

 遠山タイプと書いたピッチングはのちにストレートが150kmに達し、私の評価は野手から投手へと移っていくのだが、最初に心が動いたのは野手としての動きだった。'02年のドラフトでヤクルトと近鉄から1位指名され、抽選でヤクルト入りした。

【次ページ】 新人年に27登板、100イニング以上を投げたが……。

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