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橋口調教師、ダービー初制覇の「涙」。
ワンアンドオンリーと追う新たな夢。 

text by

島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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photograph byYuji Takahashi

posted2014/06/02 11:50

橋口調教師、ダービー初制覇の「涙」。ワンアンドオンリーと追う新たな夢。<Number Web> photograph by Yuji Takahashi

2分24秒6でダービーを制したワンアンドオンリー。母の父タイキシャトルという血統から距離適性が不安視されていたが、杞憂に終わった。

誕生日をめぐる不思議な縁。

 この日は皇太子殿下が東京競馬場で観戦されていた。実は、ワンアンドオンリーと横山典弘は、皇太子殿下と同じ2月23日生まれなのである。レース後の共同会見でそれに関して質問が及ぶと、横山はこう応じた。

「それだけじゃ勝てないですね。オーナーも同じ誕生日なんです」

 前田幸治オーナーは、昨年のダービーをキズナで、生産者のノースヒルズ代表として制している。キズナは弟の晋二氏の名義だが、実質的には連覇したようなものだ。

 検量室前に降りてきた前田オーナーはタオルを手にしており、

「これで橋口先生に涙を拭いてもらおうと思ったのですが、泣いていませんでした」

 と笑顔を見せた。

「ハーツクライの仔で勝てたことは、とても感慨深い」

 橋口調教師は、'96年ダンスインザダーク、'04年ハーツクライなど4度のダービー2着を経ての初戴冠であった。

「ハーツクライの仔で勝てたことは、とても感慨深いですね。横山騎手は感性で乗る男だから、いらぬことを言って邪魔したくなかったのでレース前は何も言いませんでした。追い合いになったら負けないという自信はありました。ほかの大きなレースを勝ったときも嬉しかったですが、やはりダービーは格別ですね。定年まであと1年半ありますが、もうやめてもいいぐらいです」

 このあとワンアンドオンリーは国内に専念し、来年、イギリスのキングジョージⅥ&クイーンエリザベスステークスに向かうプランがあるという。ハーツクライが激しい叩き合いの末に僅差の3着になったレースだ。

 積年の夢を叶えた伯楽に、また新たな夢ができた。再来年の2月で定年なので、来年のキングジョージが、文字どおり「ワンアンドオンリー」のチャンスとなる。

 同じ夢を、私たちもワクワクしながら追いかけたい。

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