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藤浪、大谷の陰に隠れた「第三の男」。
中日・濱田達郎の“プロ志向”逸話。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/05/22 10:40
2012年ドラフト組には高卒の大谷翔平、藤浪晋太郎以外にも大卒の菅野智之、東浜巨、社会人の松永昂大などが目白押し。濱田達郎のキャリアは今始まったところだ。
3年夏で評価を下げた濱田は、2位で中日に入団。
3年春は、ここぞというときの制球力が光った。そのことについて尋ねたときも、向こう気の強さを感じた。
「特別な練習はしてません。コントロールは気持ちだと思ってるんで。右バッターのインコースとかは、ビビると甘くなる」
だが、3年夏の濱田は不調にあえいでいた。その上「甲子園で勝つより難しい」と言われる地域のうちのひとつ、愛知大会をほぼひとりで投げ切ったため、甲子園にたどり着いたときは心身ともにぼろぼろになっていた。初戦、浦添商業で見た濱田には、春に感じた躍動感が失われていた。
この夏で評価を下げた濱田は、藤浪、大谷がドラフトで1位指名を受け華々しくプロ野球人生をスタートさせたのに対し、地元中日から2位で指名を受け、ひっそりとプロの世界に入った。
思わぬ先発機会に、完封で応えるプロ魂。
ルーキーイヤーも二人とは対照的だった。藤浪が一軍で10勝し、大谷は投手と野手を兼ねるという「二刀流」の先鞭をつけ、連日のように新聞を賑わせた。そんな中、濱田は二軍で黙々と投げ続け、2勝8敗とプロの洗礼を浴び続けていた。
ところが今年、思わぬ形でチャンスが訪れる。5月7日の阪神戦、先発予定だった川上憲伸が試合前の練習で腰を痛め、急きょ登板回避。ベンチ入りメンバーの中で、ある意味、もっとも放っておらず、もっとも文句を言わないだろう若い濱田にお鉢が回ってきた。
プロ向きであり、また、実戦向きでもあった濱田は、そのチャンスでプロ初先発ながら、7-0で初完封勝利を収めた。そして続く15日のDeNA戦でも先発し、6回を4安打2失点に抑え、2勝目を上げる。
いずれの試合も、顔色ひとつ変えずに、しかし長い腕を千切れんばかりに振って投げ込む姿が印象的だった。