サッカーの尻尾BACK NUMBER
カンプノウが祝福した「リーガ新王者」。
シメオネとアトレティコ、2強時代に幕。
posted2014/05/18 11:45
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
REUTERS/AFLO
試合後のカンプノウにアトレティコを讃える盛大な拍手がこだましていた。
手を叩いていたのはアトレティコファンではない。それはスタンドを埋めた9万人を越える、地元のバルサファンだった。
プライドの高いバルセロニスタが、アトレティコの優勝を素直に認め、新たなリーガ王者を讃えていたのである。
ピッチの隅でTVインタビューに答えるイニエスタは淡々と語った。
「アトレティコこそが正しい王者だ。彼らを祝福しなければ」
ピッチの上ではメッシを除く全選手がアトレティコの選手をねぎらっていた。ほとんどの選手の口から、アトレティコの優勝を素直に讃える言葉がでてくる。普段はどんなことがあってもバルサ一筋の地元紙スポルトですら、「アトレティコが正しい王者」と報じた。
ファン、選手、メディアの反応は、アトレティコが優勝に値していたことを示していた。
多くの障壁を乗り越えての優勝だった。
指揮官のシメオネは「レアル・マドリーとバルサの2強とはクラブの規模も補強の予算も桁が違う」と財政面の違いを何度も強調した。彼が言うように、クラブ収支や補強予算において、アトレティコと2強の間には大きな差がある。2005年以降、2強がリーガタイトルを独占していることからも、2強とその他の差は広がりつつあるのは明らかだった。
2人の負傷交代も、アトレティコのリズムは崩れなかった。
この試合でも、アトレティコは想定外の事態を乗り越えている。
前半16分、エースのジエゴ・コスタが負傷退場する。その7分後、今度は右サイドハーフのアルダ・トゥランが負傷交代。泣きながらベンチに戻るふたりを見て、シメオネは首を振った。
アトレティコは多くの選手が、負傷やコンディションに不安を抱える、ぎりぎりのところで戦っていた。2強とは違い、ベンチに移籍金数十億円クラスの有名選手が控えているわけではないのだ。
離脱したジエゴ・コスタとアルダはチームの鍵を握る選手だったが、そのふたりを欠きながらも、アトレティコはリズムを落とすことはなかった。2人に替わって入ったアドリアン・ロペスとラウール・ガルシアは、ベンチを温めるバルサの豪華な選手よりもよっぽど効果的だったのである。