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負傷のリスクより誠実さを貫いて――。
長谷部誠、最終節で強行出場の裏側。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byPicture Alliance/AFLO
posted2014/05/14 10:40
10日の最終節でシャルケに敗れ、自動降格圏を脱することができなかったニュルンベルク。長谷部誠は清武弘嗣とともに退団が確実視されている。
「ハセベはチームを助けてくれる存在だからだ」
「ハセベはチームを助けてくれる存在だからだ」
ドイツに戻ってきたからといって、すぐにピッチの上でチームを助けられることは出来ない。長谷部が取り組んだのはまず、ピッチの外での貢献だった。
長谷部が合流してすぐ、プリンツェン新監督のもとでの初陣となったマインツ戦にやぶれたあと、ニュルンベルクのエースであるドルミッチのこんなコメントが『ビルト』紙に掲載された。
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「(前監督の)フェルベークから本当に多くのことを学んできたんだ。だから、彼を解任したことに驚いている」
このコメントとともにビルト紙は、ドルミッチがチームとバーダーGMを批判していると書き連ねた。チームが一丸とならなければいけない時期に、バラバラになりつつあると指摘したわけだ。ブンデスリーガの得点ランキングで3位に入ったドルミッチは今シーズン終了後の移籍が確実視されており、すでに移籍のために必要なメディカルチェックをレバークーゼンで済ませたという噂さえあがっていた。
サッカーの世界で少しでも上にのぼるのは当たり前のことだ。だが、チームが団結しなければいけない時期に、このようなニュースが出る。それが混沌とした状況を象徴していた。
去就について問われると「チームに残ります」と答えた。
この翌週、同じ『ビルト』紙をはじめ、複数のドイツメディアから取材を受けた長谷部はこう答えている。
「僕はチームに残ります」
この力強い言葉は、ニュルンベルクへの忠誠心を示すものとして翌日の各地元メディアに躍った。
しかし、長谷部とニュルンベルクの契約はチームが2部に落ちた場合には、無効になるものだ(移籍金なしで他のクラブに移籍することが出来る)。もちろん、2部に落ちてからニュルンベルクが長谷部に再びオファーをすることも可能だが、「ベテラン」の選手としてチームに加わった経緯を考えても、ニュルンベルクに残るのは現実的ではない。