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DH制がダル、田中ら名投手を生んだ?
交流戦でのセパ制度逆転の舞台裏。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2014/04/18 10:40

DH制がダル、田中ら名投手を生んだ?交流戦でのセパ制度逆転の舞台裏。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

DH制の導入に賛成を表明した原辰徳・巨人監督。代打、投手交代の駆け引きも野球の魅力のひとつであったことは間違いないが、指名打者制度によるパワーベースボールにもまた別の魅力が確かに存在する。

当初セは「邪道」と指名打者制度に見向きもしなかった。

 DH制の最大の利点は選手の能力をフルに発揮できる環境を提供できることにある。

 投手は投球に専念して、試合状況や打順の巡りに左右されずに、投げられるところまでマウンドに立ち続ける。また、守備や走塁などに難点があっても、打つことに優れた打者には活躍の場が与えられるということだ。

 DH制ではない場合は、逆に投手が打席に立つことで、終盤に打順が回ったときに代打を出すか続投させるのか、また投手の打順を考慮した駆け引きなど、様々な副次的な要素が生まれて、それが勝負の大きなポイントになる。

 指名打者制度の試合ではそういう駆け引きが無くなり、ただ単に力ずくで(とは言い過ぎかもしれないが)投げて、打っての勝負になってしまう。DH制では野球のもう一つの魅力である“考える”という要素が、少なからず失われてしまうのではというのが“反対派”の考えだ。

 人気策としてパ・リーグがいち早く同制度の導入を決めたときも、セ・リーグは「邪道」として見向きもしなかった。

投手への専念が、好投手の育成に寄与しているのでは。

 ただ、である。

 近年の傾向として、パ・リーグから好投手が多く輩出している事実と、この指名打者制度の相関性を指摘する声があるのも確かなことだった。

 前述したように指名打者制度のパ・リーグでは投手は打順に左右されることなく、好投していればマウンドを任されることになる。育成という点からすると、指名打者制度によって投手に専念できることが、確実にプラスになっているというわけだ。

 一方、打者に目を向けても、ベテランの主力打者をDHで使えることで、若い選手に一つポジションが空く。もっと単純に言えば選手が座れる椅子が一つ多くあるのだから、それだけ育成のチャンスも広がるということなのだ。

 勝負として試合を楽しむには、投手がラインアップに入ることで幅は広がるかもしれない。しかし選手の力をぶつけ合った力対力の勝負を見せるという点ではDH制の方が有利で、それが交流戦の結果にも表れているのではないか、というわけである。

【次ページ】 好投手の存在が、打者の成長にもつながる。

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