ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフ界を見守り続ける男が語る、
男子ツアーに足りない2つの「基本」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2014/04/17 10:30
池田勇太にニックネームをつけるなど、ツアーが盛り上がる工夫を凝らしてきた宮本ムサシさん。
ギャラリーの減少に、人気の窮状を肌で感じる。
ゴルフ業界に足を踏み入れて今年で人生の半分になる。つまり、宮本は第一線の選手たちを間近で見てきた生き字引の一人でもある。レギュラーツアーで戦うゴルファーはほぼ年下になった。そして今、日本男子ツアーの人気が窮状に瀕していることを肌で実感している。
「僕はやっぱりギャラリーの数でそれを感じるんですよ。ジャンボさん全盛の時には、1番ホールでセカンドショットのあたりまでズラーっと人が並んだんです。それがいつしかセカンド地点まではいなくなって、どんどん……」
男子ツアーにおいて年間試合数がピークに達したのが'90年の44試合。しかし今年は23試合。この現状を踏まえ、宮本にはツアー再興のために選手たちに注文したいことがあるのだ。
「一番はギャラリーに対する感謝の気持ち。朝早くから見に来てくれた、応援に来てくれたことに対する気持ちを表してほしいなと思うんです」と、まずはファンサービスの欠如を指摘する。
他の競技のファンサービスから学ぶこと。
ゴルフは他競技に比べ、来場したファンの行動を多く制限するイベントだ。プレー中はお静かに、写真は撮るな、コースは走るな、選手が打つ時は止まれ……。ゴルフ場は市街地から遠く、近隣の駅や駐車場からすし詰め状態のギャラリーバスでコースに到着したはいいが、雨風に苦しめられることも日常だ。
自然を相手にするゴルフで、これらは変えられない。だからこそ、それ以外の面では他のスポーツ観戦に勝る部分があって然るべき。しかし現状は他の競技に匹敵していない、というのが宮本の厳しい見方だ。
「例えば最近はプロ野球でも、選手が観客席にボールを投げ込んでグラウンドに入ったりしますよね。女子ツアーではサイン入りのハンカチを配ったり。でも男子では見たことが無い。言葉は悪いけど、そういうのはパクってもいいんじゃないかなあ」
宮本自身、7年前から第1組スタート前のティグラウンドでギャラリー相手の“じゃんけん大会”を開いてきた。誰かに指示されたわけではなく、勝手に始めた。知り合いのプロに予めサインボールやグローブをもらっておき、勝ったファンにプレゼントしている。