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マスターズ、勝者と敗者を分けたもの。
普段着の「現実」と醒めなかった「夢」。 

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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posted2014/04/14 13:00

マスターズ、勝者と敗者を分けたもの。普段着の「現実」と醒めなかった「夢」。<Number Web> photograph by AFLO

20cmのウイニングパットを沈め、2度目の優勝を決めたバッバ・ワトソン。カレブくんを抱き上げ、涙をこらえてギャラリーの祝福をうけた。

「ターニングポイントは8番と9番だった」

 最終日をともに最終組で戦い、勝利したバッバ・ワトソンと敗北したジョーダン・スピース。勝者と敗者の双方が、転機はそこにあったと口を揃えた。

 そのターニングポイントに到達するまでの間、勢いがあったのは初出場のスピースのほうだった。2番(パー5)で奪ったバーディーで早々に単独首位に立ち、4番(パー3)では右サイドのバンカーからチップインして2つ目のバーディーを獲得。再びバンカーにつかまった5番こそボギーを叩いたが、キレのいいショットでピンそばにピタリと付けた6番と7番の2連続バーディーで、スピースはワトソンとの差を2打に広げた。

 だが8番と9番は、「馬鹿げていると思えるほど固くなっていた」と振り返ったグリーンに翻弄され、連続ボギーを喫した。一方のワトソンは、8番は見事な寄せで、9番は見事なパットで、2連続バーディー。

 振り返れば、その2ホールが2人の勝敗を分けたターニングポイントだった。以後、バック9で首位の座が入れ替わることは、ついに無かった。ワトソンは13番(パー5)のバーディーで2位との差を3打へ広げ、上がり5ホールは淡々とパーを拾い、ついに2着目のグリーンジャケットを羽織った。

2年前のマスターズ初優勝から、陶酔が続いていた。

 2人の運命を「分けた場所」は「ターニングポイントだった」8番と9番の2ホール。だが、2人の運命を「分けたもの」は何だったのか。

 2012年にマスターズ初優勝を果たしたワトソンは、その瞬間からグリーンジャケットの魔力に陶酔し続けていたと言う。

「フロリダのペンサコーラという小さな町で生まれ、バグダッドという田舎町で育ったバッバ・ワトソンという男にとって、マスターズの優勝は、それはもうクレイジーなほどの栄冠だった」

 当時の大会2週間前に養子縁組が成立し、生後間もないカレブくんを新しい家族に迎えたばかりだった新生マスターズチャンプは、父親としても夫としても新米で、その重圧は大きかった。1年後の昨年大会のときは、酔いから醒めるどころか、ディフェンディングチャンプとしての任務や取材が殺到した。

「マスターズ初優勝のときから、ずっと二日酔いが続いていた」

 だが、今年2月に米ツアーのノーザントラスト・オープンを制したとき、ようやく二日酔いから醒め、現実を見つめ始めた。

【次ページ】 「勝利へのカギは、今夜できる限り眠ることだ」

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