ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフ界を見守り続ける男が語る、
男子ツアーに足りない2つの「基本」。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2014/04/17 10:30
池田勇太にニックネームをつけるなど、ツアーが盛り上がる工夫を凝らしてきた宮本ムサシさん。
「4番、サード、長嶋」――。
グラウンドに響き渡る澄んだ声。いざ行かんとするアスリートの名前を高らかに呼び、集まったファンの視線を惹きつける。野球、サッカー、大相撲に陸上競技……。あらゆるスポーツ界で、ウグイス嬢や、呼出、スタジアムDJの発する言葉は、いまやスポーツイベントには欠かせない舞台装置だ。
ゴルフの場合は、彼らをスターターと呼ぶ。選手が1番ホールのティグラウンドで、アドレスに入る直前に行う選手紹介。宮本ムサシ氏(48歳)は、男女合わせて年間約30試合のスタートアナウンスを務め、今年24年目を迎えるその道のプロである。
江戸時代の剣豪と同じインパクトのある芸名は、本名の宮本久(ひさし)から派生した少年時代のニックネームをそのまま付けた。学生の頃は役者志望だったのだが、専門学校卒業後に入ったフリーアナウンサーの事務所で、この仕事に出会う。
「ゴルフ界の若大将」というコールで有名に。
1990年、24歳で始まったキャリア。最初はタイミングも分からず“キュー出し”するスタッフを隣に伴ってスタートした。「絶対に名前を間違えない」のが大前提の世界で、かつて尾崎健夫(おざき・たてお)をコールする際「おざけ、たてお」と“噛んで”しまい爆笑の渦で、「どうせオレは、大酒飲みだよ!」なんて、叱責されたこともある。
近年彼の言葉が最もクローズアップされたのは、池田勇太を「ゴルフ界の若大将」と名付けた時だ。石川遼フィーバーに沸いていた2009年秋、東海クラシックの1番ホールでそうコールした。
「当時はとにかく遼くんの人気が凄くて、マスコミの方たちが彼のライバルを探すようになってきたと感じていた」
というのが発案の動機。この初披露の際には、テレビ解説で会場を訪れていた岡本綾子から「若大将じゃなくて、青大将みたいなもんよ」と痛烈なヤジも飛んだのだが、今や池田の代名詞として十分認知されるようになった。