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マスターズ、勝者と敗者を分けたもの。
普段着の「現実」と醒めなかった「夢」。 

text by

舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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photograph byAFLO

posted2014/04/14 13:00

マスターズ、勝者と敗者を分けたもの。普段着の「現実」と醒めなかった「夢」。<Number Web> photograph by AFLO

20cmのウイニングパットを沈め、2度目の優勝を決めたバッバ・ワトソン。カレブくんを抱き上げ、涙をこらえてギャラリーの祝福をうけた。

「勝利へのカギは、今夜できる限り眠ることだ」

 家族とともに生きる中でゴルフをしたい。そう考えたワトソンは「妻のアンジーと練習方法のプランを練った。30分でも1時間でもいい。効率良くやれれば、それでいい」。

 元々「振れば飛ぶ」という無類の飛ばし屋だが、得意と感じているのはショートゲームだ。今大会を迎える際は、8年間使ってきたパターをハーフインチ長くして「腕に余裕ができた。手で操作せず、パターに仕事をさせることができるようになった」。

 そんなふうに研究や工夫や努力を重ねた上で今年のマスターズを迎えたワトソンは、もはや二日酔いでも夢見心地でもなく、現実として2着目のグリーンジャケットを狙っていける状況にあった。

 3日目の夜。スピースと首位タイで迎える最終日を前にして、ワトソンは言った。

「勝利へのカギは、今夜できる限り眠ることだ。昨日も11時に寝て今朝の目覚ましのアラームは10時5分。ワイフが作ってくれた朝食を食べ、息子と裏庭で少しだけ遊んでからコースに来た。今夜もできる限り眠り、できる限りベッドにいる。日曜日は猛暑になるだろうから、エネルギーをセーブして、たくさん水を飲んで。でも、それはそもそも僕の得意技だ。簡単にできる。問題ない」

 最終日はスピースがティショットに様々なクラブを用いる頭脳ゴルフで早々に2打のリードを奪う中、ワトソンはロングヒッターでありながらドライバーを多用。持ち前の飛距離に道具の性能をプラスしてパワーを倍増させ、そのあとは得意の小技と工夫を施したパターでスコアを作る。それは、ワトソンが無理をせず、策を弄せず、最も自然体でプレーできる、彼らしいゴルフだった。

第一打で「夢の始まりだ」と唱えたスピース。

 1番ティで最終日の第一打を打ったとき、スピースは「これがオーガスタの日曜日の夢の始まりだ」と頭の中で唱えたそうだ。思えば、この瞬間から、スピースは現実の世界から離脱し、夢の世界へ入っていったのだろう。

 バンカーからのチップインも2連続バーディーも現実の出来事ではあるけれど、心は夢の中だったのだろう。ターニングポイントとなった8番と9番で夢から醒めれば良かったが、20歳で初出場のスピースはそれでもなお夢の世界から脱出できず、最初は素敵だった夢はいつしか悪夢へ変わっていった。

【次ページ】 15番まで醒めなかったスピースの「夢」。

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