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ブライレーヴェンと過小評価。
~あの名投手の殿堂入りについて~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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photograph byMLB Photos via Getty Images

posted2011/01/18 10:30

ブライレーヴェンと過小評価。~あの名投手の殿堂入りについて~<Number Web> photograph by MLB Photos via Getty Images

再三、故障に見舞われたが、息の長い活躍を続けた名投手。1989年にはカムバック賞を受賞

セイバーメトリックスが昔日の名投手に光を当てた!

 実力に光が当てられるようになったのは、セイバーメトリックスの急速な普及がきっかけだった。なんといっても、投球内容が素晴らしい。奪三振数はシーヴァーやドン・サットンを上まわっているし、負け数が多いのも弱小球団で投げつづけていたが故の悲哀ではないか。そんな再評価がつぎつぎと浮上し、2006年、彼の得票率は53.3%に急上昇した。

 となると、あとはじわじわである。'08年が61.9%、'10年が74.2%(5票だけ足りなかった)、そして'11年、79.7%の得票率を記録したブライレーヴェンは、14年目にしてようやく殿堂入りしたのだった。

 私は胸の暖まる思いだった。

 インターネットなどで映像を見ると、あの細身だった体型にも年相応に肉がついている。それでも冗談の好きそうな表情(ラジオの野球解説で、「私はジョージ・ブレットと一緒にシャワーを浴びたのです」と発言して、聴視者をどきりとさせたこともある。このときは、少し間を置いてこう付け加えた。「あ、ほかの選手も一緒だったけど」)に変わりはないし、記者会見でのトークも非常に明快だった。

 私は思った。過小評価という勘違いはどの世界にも存在する。ただ、アメリカの野球界では意外にあっさりと過ちが撤回されることが珍しくない。ブライレーヴェンの殿堂入りは、その見本ではないだろうか。アメリカ野球には、やはりこういうハッピーエンディングがよく似合う。

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バート・ブライレーヴェン

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