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マスターズ初日はパット不調で90位。
松山英樹、成長は「心の扉」の先に。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2014/04/11 11:45
グリーンの状態が目まぐるしく変わったことでパットに苦しみ、8オーバーと大きく遅れをとった松山英樹。予選通過へ向けた切り替えも見せ、2日目に挽回の期待がかかる。
「0か、1か」ではドン詰まりになってしまうのでは。
これほど低迷した原因は何だったのか。左手首の故障の影響は「ないです」。8番は「4パットした。それだけです」。4週間も試合に出なかったことによる試合勘の不足?
「それは無い。でも、結果が出なかったので仕方ない。力が足りないということ。練習して、また明日、いいスコアで回れるように頑張りたい」
松山は昼食も取らず、休憩すら取らず、一目散に練習グリーンへ直行し、炎天下で1時間50分、ひたすら練習し続けた。
なんとかしなきゃ。なんとかしたい。松山のそんな気持ちは痛いほど伝わってきた。悔しさも手伝い、半ば意地になって練習していたようにも見えた。
だが、何かが違うように思えてならない。何から何まで「いいか、悪いか」「0か、1か」という具合に極端に結論づけてしまってはいないだろうか。
もちろん、勝負の世界は「勝つか、負けるか」ではあるのだが、「結果が出るか、出ないか」「力が十分か、足りないか」の二者択一だけでは、どんどん道を狭めてしまう。中庸を良しとするようなモデレートな考え方で、もう少しだけ自分に優しくなっても良いのではないか。いや、そうしなければ、いつしかドン詰まりになってしまうのではないか。だって、まだまだ先は長いのだから。
奥の深いゴルフ。秘密めいたオーガスタ。
思えば、スコットは昨年、自身12回目の出場でマスターズを制した。初出場の'02年はいきなり9位に食い込み、2度目の出場の'03年は23位。そしてスコット自身が優勝への期待を一気に高めた3度目は、初日にやはり80を叩き、予選落ちした。
以後、スコットはそれはそれはストイックに自分を律し、鍛錬を重ね、苦しみ、悩み、ようやく道が開けたのは、実はここ3年なのだそうだ。
「マスターズ前の技術と体調と気持ち、すべての準備の仕方を変えようと決めたのは'09年。コーチを代えて出た'10年大会が最初の転機になった。自分はオーガスタで優勝を目指して、本当の意味で戦えるのだと実感できたのは'11年大会のとき。そう感じたときに、ああ、フィル・ミケルソンらが何年もかかって得た感覚や自信は、こういうものなんだろうなと初めて気づいた」