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シンクロ代表に井村雅代氏が復帰!
試合当日に「最高」を実現する技術。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2014/03/02 08:15

シンクロ代表に井村雅代氏が復帰!試合当日に「最高」を実現する技術。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

北京五輪で中国チームを率いて銅メダルを獲得し、世界を驚かせた井村雅代氏。協会との確執は解消されたのだろうか。

 2月22日、シンクロナイズドスイミング日本代表コーチに、井村雅代氏が就任することが決まった。

 2004年のアテネ五輪後に退任して以来、10年ぶりの復帰である。

 日本のシンクロナイズドスイミングを世界でも有数の強豪に育て上げた井村氏の功績は、広く知られるところだろう。シンクロナイズドスイミングがオリンピックで採用された'84年のロサンゼルス五輪から6大会連続で日本にメダルをもたらした最大の立役者でもある。

 チーム、デュエットともに銀メダルを獲得したアテネ五輪後、指導者の「世代交代」を促す声もあり、退任となった。その時点で、引き継げる指導者がいると確信しての交代であったのか、疑問ではあったが。

 井村氏の手腕があらためて注目されたのは、その後、中国のヘッドコーチに就任してからのことだ。世界でも中位クラスに過ぎなかった中国を、北京五輪のチームで銅メダル、一度退任して復帰したロンドン五輪ではデュエットで銅、チームで銀メダルを獲得するまでに引き上げた。「勝負へのこだわり」と「現実を見極める目」を存分に発揮したのである。

試合当日に、もっともレベルの高い演技を完成。

 日本代表を率いていた頃も厳しい練習で知られていたが、そこにあるのは、目標へ向けて、一切妥協しない姿勢である。

 手足の短い日本の選手の体型で、どのように見栄えをするプログラムを築くことができるか。ただ海外の真似をしただけでは勝つことはできないと、オリジナル性の追求も図ってきた。それもまた、勝負へのこだわりからであった。

 そして何より、目標設定とそこに至る過程を実現する技術にこそ真価がある。オリンピックの試合当日に、もっともレベルの高い演技を完成させるノウハウだ。

 どれだけ理想を高く掲げても、試合のときに完成していなければ意味はない。といって、あまりに目の前の現実に囚われ過ぎて、目標設定を下げれば成績はあがらない。目標とする大会までに、どこまで伸ばすことができるか、その見極めに長けている。

「技術的に見れば決して高いとは言えないけれど、中国の選手の特徴を捉えて、うまく見せ場を作り上げた。見事だと思います」

 北京五輪で2つの銀メダルを獲得したスペインでコーチをしていた藤木麻祐子氏の評もまた、それを物語っている。

【次ページ】 先行きが見えないからこその、井村氏の再登板。

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