スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
新監督とサプライズ。
~MLB負け越し球団、逆襲の条件~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2014/03/01 08:15
今季からマリナーズの指揮官に就任したマクレンドン監督。ヤンキースからカノーも加え、長年の低迷脱出を目指す。
逆襲は、新監督の手腕が最大の原動力になる。
負け数が極端に多いチームは、逆襲候補から除外してよいだろう。かつてダイヤモンドバックスが「前年97敗」からのターンオーバーを演じたことはあったし('98年→'99年と'2010年→'11年の2度)、カブス('97年→'98年)レイズ('07年→'08年)が「前年90敗以上」から這い上がった事例もないではないが、アストロズやマーリンズにサプライズを期待するのは時期尚早というものだろう。シカゴの2球団やツインズも展望はきびしい。ほかにも、主力選手の高齢化とか、弱体投手陣とか、貧打とか、問題を抱えたチームが多い。
では、サプライズを起こす球団に共通する特徴とはなんだろうか。
新戦力の加入や故障者の復活などはもちろん必要条件だが、最大の原動力は新監督の手腕だろう。レッドソックスが'13年に躍進した最大の理由は、監督がボビー・ヴァレンタインからジョン・ファレルに替わったことだ。インディアンスのテリー・フランコーナ('13年就任)やドジャースのドン・マッティングリー('11年就任)がいきなり結果を出したケースも記憶に新しい。
候補はジャイアンツ、マリナーズ、エンジェルスか。
1点差ゲームに強くなることも、勝ち越しへの近道だ。たとえば2012年のオリオールズ(バック・ショウォルター監督)は、1点差ゲームで29勝9敗の好成績を残した。'13年に後退した理由は、1点差ゲームで20勝31敗と負け越したことだろう。一方、ボブ・メルヴィンが率いるアスレティックスは'12年に25勝18敗、'13年に30勝20敗と安定した勝負強さを見せている。プレーオフ進出を指定席にするには、この勝負強さを維持する必要がある。
ということになれば、サプライズ・チームの候補はおのずから絞られてくる。昨季、地区優勝を期待されながら実力派ぞろいの投手陣が故障で崩壊したジャイアンツ。新監督ロイド・マクレンドン(タイガースの打撃コーチ時代に手腕を発揮した。ダスティン・アクリーやジャスティン・スモークが伸びるかもしれない)を迎えたマリナーズ。アルバート・プーホルスやジョシュ・ハミルトンがある程度復活したときのエンジェルス。このあたりが妥当な線で、本当の番狂わせがあるとしたら、ロッキーズかメッツだろう。前者にはトロイ・トゥロウィツキーとカルロス・ゴンザレスの強打者がいるし、後者ではカーティス・グランダーソンと松坂大輔の奮起に期待したい。まあ、容易な道のりではないだろう。大リーグ全体の順位予想は、もう少ししてから試みることにする。