スポーツのお値段BACK NUMBER
スーパーボウル1試合でCM300億円!?
放映権料で考えるスポーツの「価値」。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byAP/AFLO
posted2014/02/26 16:30
30秒CMの広告費が4億円にものぼる化け物コンテンツ、スーパーボウル。リアルタイムで観戦したい、というスポーツの特性を存分に生かしたからこそ、現在の地位がある。
エンターテイメント性の向上を、収益に変える。
その背景には、MLBの改革へのたゆまぬ努力があります。
元コミッショナーのピーター・ユベロスは「リーグビジネス」の概念を提唱。それを受け継いだ現コミッショナーのバド・セリグは、交流戦、ワイルドカード、新たな戦力均衡策などを次々と実行に移し、競技としてのエンターテイメント性を向上させていきました。だからこそ、MLBと放送局との放送権の交渉時も、それらの打ち手の導入を材料に、放送権の値上げが当然のものとして受け入れられたのです。
その結果、MLBのビジネス面を担うMLBアドバンスドメディア(MLBAM)は急成長を続けています。2012年度のユーザー数(MLBAMのコンテンツを利用するためのアプリダウンロード数)は670万人だったのに対して、昨年度は1000万人を超え、その売上は約700億円に到達、営業利益は225億円を超えるまでになっています。
ひとつここで改めて言っておきたいのは、MLBは、エンターテイメント性を向上するために導入した変化を、しっかりとリーグ収入としてマネタイズ(収益化)しているということです。
リーグの努力が、チームの収入アップに貢献。
また、田中将大選手の獲得合戦で最後までヤンキースと競り合ったドジャースの資金源も、やはり放送権料でした。2013年限りでFOXとのローカル放映権契約を満了し、新たにケーブルテレビ大手のタイム・ワーナー・ケーブル(TWC)社と契約を締結。その条件は、2038年までの25年間で総額70億~80億ドル(約7000~8000億円)という超巨額契約です。
これは、FOXと結んでいた従来の契約金額の約8倍にあたります。リーグが主導してエンターテイメント性を向上させ、リーグが率先して全国放送の放映権の価値を上昇させた結果、それがしっかりとチームの収入アップに貢献している流れが出来ています。
それにしても、なぜアメリカではこれほどまでにスポーツ中継の価値が高く評価されるのでしょうか。それは、録画機器が普及しCMがスキップされがちなドラマなどと異なり、スポーツがライブ視聴を基本とした貴重なコンテンツだと考えられているからでしょう。いわば、放送コンテンツに残された“最後のオアシス”なのです。