MLB東奔西走BACK NUMBER
師との出会いで大家友和が覚醒する。
2人のナックルボーラーの邂逅。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byKYODO NEWS
posted2014/02/22 08:20
2009年以来、5年ぶりに米球界に復帰した大家友和投手。かつてのチームメイトと共に、キャンプからメジャー昇格を目指す。
師であると同時に、壁でもあるディッキーの存在。
ただし、ブルージェイズという選択は、ナックルボーラーとしての大家に多大な影響を与えるのは間違いないが、単なるメジャーリーガーという側面から見ると、ディッキーの存在そのものは大きな壁でしかない。
ディッキーは昨年、先発の大黒柱として期待を受けながらも、それに応えられなかった。昨年の彼の投球からも理解できるように、結局ナックルボーラーは不安定なボールそのままに、エースとして計算できる投手になるのが難しいのである。
つまり、一般的な先発ローテーション5人という構成で、ナックルボーラーを2人入れるというのは現実的にかなり可能性が低い話になってくる。
ましてやリリーフ投手として制球力がまったく当てにならないナックルボーラーを起用するのはさらに難しいだろう(万に一つ可能性があるとすればロングリリーバーだろうが)。
つまり、ブルージェイズというチームで大家がメジャー昇格するのは至難の業なのだ。
ブルージェイズが大家と契約した本当の理由。
ではなぜ、ブルージェイズが大家とマイナー契約したのか。それにはある理由があった。
昨年まで正捕手を務めていたJ・P・アレンシビア選手と再契約せず、今年からディオナー・ナバロ選手を中心とする新たな捕手体制で臨む。当然、彼らはナックルボールを受けている経験が少ない。
そのため、キャンプ中に捕手に少しでもナックルボールを体験させるために、ディッキー以外にもナックルボールを投げる投手がいた方が、効率よく練習することができるというわけだ。
だが、大家のような招待選手として参加しているベテラン選手にとって、キャンプはメジャー昇格を賭けていると同時に、他チームに向けたショーケースでもある。
彼がキャンプ中にナックルボーラーとして認められる投球を披露できれば、ブルージェイズに留まることなくメジャー復帰のチャンスは一気に広がることになる。
2011年に受けた手術後の右肩の状態や年齢を考えれば、今回の挑戦が大家の野球人生を賭けた戦いであることは容易に想像ができる。
果たしてこの1カ月半で大家は覚醒するのか。彼の生き様をじっくりと見極めることにしよう。