スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
テレビならではの五輪の楽しみ方。
「言葉力」で選ぶ、解説のMVPは誰だ。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2014/02/17 11:40
現地での観戦が持つ臨場感は特別なものがあるが、テレビで、解説や実況を聞きながらスポーツを観る、というのもまた別の意味で特別な体験になりうるのだ。
オリンピックを全期間、日本のテレビで見るのは8年ぶり、トリノ・オリンピックのとき以来だ。
今回、実感したのは、
「全体像を把握するには、現場の記者よりも日本の視聴者の方がはるかに有利」
ということだ。
もともと、冬のオリンピックはノルディックの山岳エリアと、町中の氷のエリアが離れているので、記者にとって両者をカバーするのはむずかしい。
たとえば、女子のカーリング取材を優先させてしまった場合(私が現地にいた場合は、そうした可能性が高い)、ノルディック複合、ノーマルヒル個人戦での渡部暁斗の銀メダルは見られなくなる。
今回のスグレものは、NHKのアプリだった。このアプリとテレビがあれば、もともと競技数の少ない冬季オリンピックの全体像が把握できる。
びっくりしたのは、男子のカーリングやアイスホッケーなどが見られてしまうこと。こんな贅沢な時代が到来していたとは知らなかった(ロンドンの時もそうだったのかな?)。
リオデジャネイロ・オリンピックは現地での取材を予定しているので、日本の状況を想像しながら、取材をしなければいけないと実感した。
解説は競技の魅力の「語り部」。今回の殊勲賞は……。
そしてオリンピックの楽しみといえば、アナウンサーと解説陣の組み合わせ。
前回、前々回とカーリングの小林宏氏が競技の魅力を十分に伝え、極端な話をすれば、日本におけるカーリングの歴史を変えた。
今回、解説陣で大きな発見があったのはアルペン競技だ。
私が小学生の時代は、地上波で放送がありインゲマル・ステンマルク(スウェーデン)や、時代を下って、アルベルト・トンバ(イタリア)など一流のアルペン選手の名前を覚えているのはひとつの「常識」だった。
しかし、最近では認知度が低くなり、競技の魅力がなかなか伝わりづらくなっている。
そんな状況であるにもかかわらず、強力な「語り部」がいた。