ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ゴルフの広告になぜプロ野球選手!?
憧れと共感を両立した人選の理由。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2014/02/05 10:40
カーディナルス時代、チームメイトのアルバート・プホルスが設立した基金のチャリティマッチに夫婦で参加した田口壮は、ゴルフ歴20年。
ビギナー向けのクラブは、販促が難しいが……。
ちなみに「最初に話を聞いたときはビックリしたけれど、嬉しくて」とは与田剛。元中日の名ストッパーが無邪気に言ったように、9選手は現役時代から長年ゴルフと親しんでおり、全員がオファーを快諾、撮影にも意気揚々と参加したそうだ。
ところで、ミズノが広告戦略にプロゴルファーの起用を止めたのか、といえばそうではない。
前述のとおり各メーカーは本来、契約するトッププロを広告塔にするのが一般的。同社でも、ルーク・ドナルドや昨年日本オープンを制した小林正則、女子ではステーシー・ルイスらが顔となって、それぞれが別シリーズのクラブの販促素材となっている。
しかしゴルフクラブには使い手のレベルによってそれぞれ特長がある。プロ野球OBがPRするシリーズは、基本的にはビギナーから50代、60代のシニアをターゲットにしたモデル。つまりドナルドらが実際に試合で使う可能性は低く、プロゴルファーを宣伝の前面に打ち出しても、ユーザーへの説得力を欠いてしまう。
このクラスのゴルファー向けの販促プロモーションは難しい。CM出演者が一般アマチュアだったり、シルエットだけ、といったケースも珍しくなく、視聴者や読者の関心を惹きにくい。同社は、ある意味、プロより知名度があるアマを起用することで、問題を一気に解消したのだ。
ゴルファーの約半分は野球経験者というデータ。
もうひとつ、彼らの起用を後押ししたのが、同社が持つユーザーのデータ。ミズノのクラブを握るアマチュアゴルファーの約半分が、野球経験者だったことだ。
「周りの方からは『野球選手だから、ゴルフは上手いんでしょう? ボールも飛ぶんでしょう?』なんてよく言われるんだけど……なかなかそうはいかない。これを機会に上達したい」
と、少々気後れして言うのは巨人、横浜で活躍した仁志敏久。ベストスコアは82で、ドライバーショットも芯に当たれば300ヤード級のドライブだって出る。しかしアマとしては上級者だが、一昨年、日本男子ツアーに出場した桑田真澄や立浪和義らとはちょっと違う。アスリートではあるが、ゴルフと向き合う気持ちは一般のアマチュアに近い。