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<ソチ五輪で初代王者へ> 高梨沙羅 「女子ジャンプの歴史を背負って」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2014/01/24 06:15
金メダル候補として期待を集める17歳の天才少女・高梨沙羅。
エース誕生の背景には、女子ジャンプの苦難の歴史があった。
今回はNumber843号に掲載した高梨選手の記事を全文公開します。
待ちに待った日が、1日、1日と近づいている。そしてその日を待っていたのは、彼女だけではない――。
2014年2月7日に開幕するソチ五輪では、いくつかの新種目が採用される。中でも、スキー・ジャンプの女子は、今日、日本で注目を集めつつある。その中心にいるのが、17歳の高梨沙羅である。
これまでの成績を考えれば、不思議はない。
中学1年生にして日本代表となった高梨は、中学3年生だった2011-2012年のシーズンにはワールドカップで初優勝。2012-2013年にはワールドカップで総合優勝を飾る。しかも、計17大会中、優勝は8回、表彰台に上がった回数は実に14回を数えた。さらに世界選手権でも銀メダルを獲得している。
どの大会でも、と言っていいほど他を圧倒する飛距離をマークすることが生むインパクトの強さと、日本ジャンプ界にあって突出した存在感。必然、ひとつの質問を呼ぶ。
浮ついたところを見せず、基本を大切にし続けた。
――なぜそんなに飛べるのか?
「基本を大切にしてきたからだと思います。やっぱり基本をずっと頭に置いて練習してきたので、ちょっと悪くなったら、その基本に戻ればいいということです」
多くの指導者が語るように、技術の高さはむろん、小学2年生でジャンプを始めてからの足取りをつぶさに見れば、強さを裏付ける事実には事欠かない。
例えば、2011年、ソチ五輪での採用が決まって以降、高梨には、ことあるごとにこんな質問が飛んだ。
「ソチの目標は?」
そのたびに、答えた。
「オリンピックよりも、まずは目の前の大会を頑張ります」
将来の目標を思い描くよりも、ひとつひとつを大切にしていきたいという姿勢がそこにうかがえる。決して浮ついたところを見せてこなかった。