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ローマに首位追撃の秘密兵器が加入。
“Ninja”ナインゴランの数奇な人生。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2014/01/22 10:40
当初はインテル入りが有力視されていたナインゴラン。ローマはこの補強を首位追撃の契機にできるか。
畏怖と尊敬が込められた“Ninja”という呼称。
たとえカリアリに黒星がついても、破戒僧のようないかつい風貌のナインゴランは、毎試合のように対戦相手を疲労困憊に追い込んだ。東洋系の顔立ちと不屈のプレースタイルによって、彼はサルデーニャ島の民から畏怖と尊敬をこめて、いつしか“Ninja”と呼ばれるようになった。
ナインゴランが加わったことで、ローマの中盤は今やリーグ屈指の完成度だ。
円熟のイタリア代表デロッシに、天才肌のボスニア代表ピアニッチと若きオランダ代表のストロートマンが並ぶ。王者ユーベと比べても、決して引けを取らない。
いずれもプレースタイルを異にする彼らは、ナインゴランをポジション争いの新たなライバルというより、心強い援軍だと捉えている。ストロートマンに至っては「やっとオランダ語で話せる!」と嬉しさを隠さない。
「周りのレベルが上がったことで、プレーしやすくなる」
1月7日、ミラノがHONDAフィーバーに騒いでいた頃、首都ローマに到着したナインゴランは、トリゴリア練習場へ合流すると、2日後のコッパイタリア5回戦にすぐさま出場。5日後の19節ジェノア戦にも先発フル出場し、2連勝に大きく貢献した。
18節に行われたユベントスとの直接対決に0‐3で敗れ、シーズン初黒星を喫したローマだったが、怒涛の2連勝によって、選手たち全員の闘志が再点火した。
シーズン前半戦を終えて挙げた勝ち点44は、セリエAが20チーム制となった'04年以降、クラブ史上最多記録だ。就任1年目で旋風を巻き起こしているガルシア監督も、戦力の底上げを実感している。
「(カリアリ時代に比べて)周りの選手たちのレベルが上がったことで、ナインゴランはよりプレーしやすくなっただろうと思う。まるで、夏の合宿からこのチームにいたように溶け込んでいるし、プレー内容は期待通り素晴らしい。ローマが劣っているところなど何もない。われわれは決してあきらめないことをユーベは知っておくべきだ」