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縮小均衡ではなく、拡大均衡を!
ヴィッセル・J最年少社長の野望。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKyozo Hibino
posted2014/01/07 16:30
清水克洋社長は、マッキンゼーからヴィッセル神戸に入社した変り種。中学・高校とサッカーをしてきた元サッカー小僧でもある。
-12億2800万円 ⇒ -1億1400万円
(2005年と2012年のヴィッセル神戸の営業利益)
最終節までもつれたJ1優勝争いや、昇格・降格をめぐる意地のぶつかり合いなど、2013年のJリーグは大いに盛り上がりました。
ただ、終盤こそ世間の注目を集めたとはいえ、1試合あたりの平均入場者数(17,226人)は前年をわずかながら下回り、シーズンを通しての集客増には課題が残る結果となりました。Jリーグ各クラブの収支(一昨年度)を見ても、J1・J2計40クラブ中16のクラブで営業利益がマイナス、つまり赤字に陥っています。やはり、ビジネス的な成功を収めているとはまだまだ言い難いのが現状なのです。
クラブの経営者はこうした状況にどう向き合い、どのように収支の改善を図ろうとしているのでしょうか。今回は、ヴィッセル神戸・清水克洋社長へのインタビューを通して、クラブの抱える問題点や経営のあり方について考えてみたいと思います。
ヴィッセルは、各クラブの経営状況が公開されるようになった'05年度から'12年度まで8期連続で赤字を計上しており、さらに昨季はJ2での戦いを余儀なくされました。こうした厳しい環境下で経営の舵を取る清水社長は35歳。29歳の時、外資系コンサルティング会社からヴィッセルに転職し、事業開発室長などを経て昨年、Jリーグ最年少の社長に就任しました。
順位 | 営業収入 | 営業利益 | ||
2005 | J1・18位 | 18億7600万円 | -12億2800万円 | ワースト |
2006 | J2・3位 | 13億6200万円 | -6億6900万円 | ワースト2位 |
2007 | J1・10位 | 18億6500万円 | -5億5700万円 | ワースト |
2008 | J1・10位 | 20億2600万円 | -4億7900万円 | ワースト |
2009 | J1・14位 | 24億4600万円 | -2億7600万円 | |
2010 | J1・15位 | 20億3500万円 | -2億4000万円 | |
2011 | J1・9位 | 20億5900万円 | -9000万円 | |
2012 | J1・16位 | 22億5000万円 | -1億1400万円 | |
2013 | J2・2位 | ? | ? |
予算の段階から赤字を見込んでの中長期計画。
並木 まずは、J1昇格おめでとうございます。
清水 ありがとうございます(笑)。
並木 お祝いの言葉を言っておきながら恐縮なんですが、経営状況について聞かせてください。過去の収支を見ると赤字が続いています(表を参照)。ずばり、原因は何ですか?
清水 私たちとしては、過去を振り返ると、まずはチームの強化を図り、そして勝つことで収入が追いかけてくる、という中長期的なプランを描いてきました。予算の段階から赤字になることを見込んでいたんです。黒字になるように予算を組んだけど失敗して赤字になってしまった、というのとは意味が違うと思っています。もちろんサッカーですからお金をかけても勝てない時もあるし、J2に降格してしまったのも事実。でも、赤字の額は着実に減ってきています。