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縮小均衡ではなく、拡大均衡を!
ヴィッセル・J最年少社長の野望。
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph byKyozo Hibino
posted2014/01/07 16:30
清水克洋社長は、マッキンゼーからヴィッセル神戸に入社した変り種。中学・高校とサッカーをしてきた元サッカー小僧でもある。
親会社に頼らない自立こそが、クラブの目指す場所。
並木 予定された赤字とはいえ、Jリーグにはクラブライセンス制度が導入されました('12年度から3期連続赤字、または'14年度決算で債務超過となった場合はライセンス剥奪)。さらなる収支改善が求められますね。
清水 先ほど3つのタームでチーム強化と収支改善を達成してきたという話をしましたが、これからの3年間は、J1で上位争いできる戦力を整えつつ収支もとっていくことが目標になります。選手の人件費を削って(チームの強さを求めないで)とにかく黒字にする、ということならどのクラブでもすぐにでもできますが、私たちがチャレンジしたいのはそのような縮小均衡ではなく、いわば拡大均衡です。ヴィッセルとしては、そういうベースを作るべきタイミングにきていると思いますし、ご指摘の通りクラブライセンスの問題もありますからね。売上で25億円を達成できれば、チームを強くしながら黒字化することが可能だと思っています。
並木 確かに、赤字・黒字と一概に括ってしまうのは無理がありますよね。ヴィッセルで言えば、メインスポンサーである楽天が「広告宣伝費として10億円出します」と言った瞬間に黒字になるわけで……。
清水 もちろんクラブによりけりですが、そうした親会社的な大口のスポンサーからの広告料の多寡によって赤字か黒字かが決まる、という現実は確かにあるでしょう。でもやっぱり、最後はそこに頼ることなく自立することがクラブ経営の目指すべき方向性だと思います。ヴィッセルは一昨年、大口、小口含めて過去最高の110社ものスポンサーに支えて頂きました。それが昨年はJ2降格で20社ほど減ってしまいましたが、地道に営業を続けることで再び110社まで戻すことができました。地域の企業から応援してもらっていることに感謝しながら、来季はJ1でさらなる飛躍をしたいと思っています。
クラブライセンス制度の“功罪”とは?
このインタビューを通して考えさせられたのは、クラブライセンス制度の“功罪”についてです。
ライセンス制度は、まずブンデスリーガで始まり、それをもとにUEFAが'04-'05シーズンからCLの出場資格を設定、さらに'08年にFIFAが、'13年にはAFCも導入しました。こうした世界的な動きの中で、日本のサッカー界も導入に踏み切ったわけです。審査基準は「競技」「施設」「組織運営・人事体制」「財務」「法務」の5項目にわたります。